アメリカはなぜユネスコ脱退を表明したのか? 世界遺産をめぐる中東の思惑
世界遺産制度がイスラエル批判の道具になっている
西氏は、「世界遺産制度が、旧市街を含む東エルサレムやヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの占領体制を批判したり、パレスチナ全域におけるユダヤ人の歴史を否定したりするための道具になっています」とする。 「イスラエルとアラブ・イスラム諸国の対立が国連に持ち込まれたというより、国連は最初からこの対立の主戦場でした。なぜならイスラエルは、国連総会のパレスチナ分割決議をパレスチナのユダヤ人が受け入れ、反対するアラブ人・アラブ諸国との戦争に勝った結果、独立し、国際的に承認されたからです」と話す。 アメリカ国務省のナウアート報道官は、「ユネスコが再び文化や教育の推進を目的とするようになるなら、必ずしも脱退しない」と述べており、脱退撤回に含みを残している。 アメリカの意図はどこにあるのか? 西氏は「2国間関係を重視し、一国一票制の国連機関にアメリカが分担金を一番多く払うことを嫌うトランプ政権の傾向が強く出ています。これまでのアメリカの政権であれば、イスラエルの外交努力を損なう形での脱退通告はしなかったでしょう」と指摘し、脱退表明は国連に対するトランプ政権の姿勢の現れとの見方を示した。