「会って0秒」で相手の心の扉を開けられる鍵 元TBSアナウンサーが実践するコミュ力アップ術
対話は「焚き火」に似ています。 まずは火種をつくり、少しずつ薪(まき)をくべて、適度に空気を通しながら、炎を大きくしていく。その最初の火種をつくるのが、「好奇心」だと私は思います。 目の前の人が、これまでどんな人生を歩んできて、これからどこへ向かおうとしているのか。どんなことに夢中なのか。なぜそれに夢中なのか。今につながった失敗経験はあったのか。どうやってそれを克服したのか。何を一番大事にして、何を一番許せないのか。
目の前の人に対して好奇心を発動させれば、聞いてみたいことは泉のように湧いてきます。好奇心を着火させることが、対話の温度を上げていくために欠かせないスターティングポイントになるのです。 私の番組を見てくださった方から「ハセンさんって、誰に対しても本当に興味津々に、目を輝かせて話を聞いていますね」と褒めていただけることがあります。 たしかに、私は人に対する好奇心が旺盛なほうだと思います。でも、だからといって、誰に対しても最初から100%興味を持てるかというと、そんな才能はありません。実際には、「話を聞くうちに、好奇心が湧いてくる」という感覚です。
つまり、好奇心も意識次第で高められるということ。 事前情報がほとんどない初対面の相手であったとしても、「この人のどんなところに自分は興味を持てるだろうか?」と好奇心発動モードをオンにすれば、きっと対話は徐々に温まってくるはずです。 ■「会って0秒」の挨拶と笑顔で、相手との「間合い」も取れる 「よい対話を始める3原則」として紹介した「挨拶・笑顔・好奇心」には、相手の心を一瞬で開いて対話の火種を着火させる効果があることをお伝えしました。
実はこのうちの挨拶と笑顔には、もう一つの重要な目的があります。それは、「相手との間合いを取る」という効果です。 ニコッと笑顔で「おはようございます!」と挨拶をした直後、私は相手の反応をすかさずチェックしています。 即座に笑顔と挨拶を返してくれる相手なら、「おっ、今日は最初からスムーズに話せそうだな」。 ちょっと硬い表情で挨拶が返ってきたら、「もしかしたら緊張しているのかな。ゆっくりアイスブレイクしながら話を進めよう」。
ボソボソッと小さな声で挨拶を返してきたら、「体調がよくないのかもしれない」。 滅多にはいませんが、ほとんど目を合わせないような極端に渋い反応を返す相手には、「警戒しているかな」「私にネガティブな印象を持っているかも?」と、心の中でひそかにアラートを鳴らします。 このように、挨拶と笑顔を自分から投げかけた後の反応によって、後の対話につながる「心構え」が整います。そのときの相手の心身の状態や、自分との心理的な距離感を推し測るための優れた材料。「挨拶と笑顔」にはそんな役割もあるのです。
国山 ハセン :映像プロデューサー、元TBSアナウンサー