「実際に困っている人たちがたくさんいるのに」…クルド人のケバブ屋が能登で炊き出しの「意外な理由」
1度目はハッピーケバブの従業員たちと4人で、2度目はクルド協会と「アラスケバブ」と一緒に7~8人で能登まで炊き出しに行ったという。 炊き出しは、現地で焼いて熱々で提供する鶏肉をメインに、レンズ豆のスープ、バターやオリーブオイルで炒めたトルコのライス、ザクロやチェリーの小さなサイズのジュースなどだったという。 「レストランでいつも出しているメニューですが、普段よりもっとおいしくなるよう気を遣って作りました。 『わざわざ川口から来てくれてありがとう』と言ってくれる人もいたし、何も言わなくともみんなスマイルをくれるから、喜んでくれているのがわかって、こっちも心がすごく温かくなりました」 しかし、実際に被災地に行ってみて、人手も食べ物も全然足りていない状況を目の当たりにしたことで、2月に再び炊き出しに行くことを決意した。 「僕たちが行ったときは、小さなスーパーが(午後)3時までしかやっていないとか、コンビニも(午後)7時までしかやっていないとかで、棚もスカスカな感じでした。 歩けないおばあちゃんとかもいるし、みんな本当に困っている、苦しんでいるのがよくわかりました」 ◆「『行くな』という声もありましたが…、文句を言うよりも他にできることがあると思うんですよ」 被災地では多くの人が温かい炊き出しを喜んでくれていたにもかかわらず、ティフィキさんのXには誹謗中傷のコメントも寄せられた。 「『行くな』という声もありましたが、実際に困っている人たちがたくさんいるのに、なぜそんなことを言うのかと思いました。 文句を言うよりも他にできることがあると思うんですよ。 税金払ってるのかとかいうコメントまでありましたが、僕にも家族がいるんだし、税金が心配なら税務署に行けば良いでしょう。だんだんムカついてきましたよ」 それでも「良い人も悪い人もどこにでもいるから」とティフィキさんは折れず諦めず、2回目の炊き出しに行った。 「お金のことなんて本当は言いたくないですが、2回の炊き出しで何百万円も持って行きましたよ。でも、お金は良いんです。お金は人間が健康であれば、いつでも入ってくるものだから。 寝るときに自分には家もある、家族もいる、食べ物もある、それが急にみんななくなったらと考えたら、すごく怖くなりました。 日本人はこの国がどれだけ良い国か、自分たちがどれだけいろんなことをできるのか、わかっていないと思います。 僕たちがやったことなんて、誰でもできることで、1つの点にしか見えないと思う。でも、文句を言うんじゃなく、周りの人もやってみれば、この国はすぐに治るよ。 それに、こんな記事を書いてくれるより、実際に(被災地に)行ってスマイルあげたほうが、スマイル返してもらえますよ。いろいろ文句を言う人はいるけど、僕は諦めないで続けていきます。だって、僕は良いことをやっているんだから」 耳が痛いが、まさしくその通りだ。 自分自身は1月初旬にたまたま金沢に行った際、金沢の観光業の人たちが困っていると聞き、できるだけ現地でお金を使い、金沢の様子をSNSで拡散し、能登の商品を買い、少額ながら寄付もした。 それで非当事者としての後ろめたさが、少しばかり軽減した気もしていた。 しかし、寄付やボランティアで大切なのは、継続して行うことだ。なぜなら2ヵ月経った今も、被災地の暮らしは全く立て直せておらず、今も苦しみが続いているからだ。 取材・文:田幸和歌子
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