WEST.からBRING ME THE HORIZONまで。BABYMETALのゲスト出演も話題となった「SUMMER SONIC 2024」レポートDAY2【写真8点】
サバシスターを観終わり、さすがに腹が減ったので焼きそばを食べる。この暑さの中では水分補給だけでなく適度な食事も重要。ほどほどに腹が膨れたところで、新しい学校のリーダーズを観たかったことを思い出し、MOUNTAIN STAGEの真横にあるエスカレーターを下ろうとした……のだけど、混雑でなかなか前に進まない。 そして、ようやくフロアに辿り着こうとしたとき、あちこちから「え、ヤバくない……?」というざわめきが聞こえてきた。確かに、ヤバかった。2万人規模の広大なMOUNTAINのフロアが人で埋め尽くされていたのだ。ライブを観て納得。若い客層との親和性も高かったのだろうが、4人のパフォーマンス力の高さよ。SUZUKAの声量や歌唱力を筆頭に、各メンバーのリズム感や統率の取れたダンスは遠目でもわかるぐらいすごかった。 それを支えるのがサウンドのよさ。あの広大なスペースで耳にする「TOKYO CALLING」の音圧、特にブラス系の音の迫力にはぶっ飛ばされた。海外公演で研ぎ澄まされたパフォーマンスは、唯一無二なんて言葉では表現しきれないぐらいの衝撃だった。 NIA ARCHIVESは今回最も楽しみにしていたアクトの一つ。“Jungle is the sexiest music”というサンプリングボイスからはじまったステージは、彼女のジャングル/ドラムンベース愛に満ちあふれたものとなった。ジャングル黎明期の90年代と思しき映像や、当時のシーンからの影響を色濃く感じさせる「Off Wiv Ya Headz」からガツンとヤラれた。あのころ、強くあこがれながらも決して体験できなかった本場のレイブシーンの片鱗を味わえたような気がして、なんとも言えぬ喜びが体中を駆け巡った。MOUNTAIN STAGEという広大なフロアがその興奮を増幅した。楽しさよりも感謝が勝る時間だった。 しばしの休憩時間を挟み、一目拝みたかったTylaへ。アマピアノ、アフロビーツ、R&B、ヒップホップといったジャンルを越え、アフリカンミュージックを現代的なポップミュージックに昇華し、今年のグラミー賞では「最優秀アフリカン・ミュージック・パフォーマンス賞」を受賞した新しい時代のアイコンである。巨大なトラのオブジェをバックに妖艶にパフォーマンスする姿に釘付けになった。 ダンサーを数名引き連れていたが、Tylaは圧倒的。彼女のような飛び抜けた存在はレアケースなのかもしれないが、アフリカの新しい音楽シーンが世界を席巻している、そのわけを感じることができた。SNSでもバズを起こした「Water」では、背中に水をかけるダンスも日そうしていたようだが、ライブ中盤、後ろ髪を引かれながらMARINE STAGEへと移動する。 この日のヘッドライナー、BRING ME THE HORIZONのステージは本当に素晴らしかった。観る者の感性をストレートに刺激するパフォーマンスやステージ演出は、メタルが好きかどうかなんて関係なく、万人が楽しめるエンターテインメントの域に達していた。ファンにはすっかりおなじみのTVゲームオマージュの演出は以前からあるものだが、今回はさらにブラッシュアップ。さらに、ほぼ1曲ごとに見どころを設け、決して飽きさせないものになっていたのには驚いた。何しろ、オープニングが初代プレステの起動画面オマージュからはじまり、そこから「ファイナルファンタジー」のオマージュへとつなげるんだから笑うしかない。TVゲーム好きのオリヴァー・サイクス(Vo)らしい演出だ。 ほかにもモッシュピットをつくるように何度もあおったり、観客同士で肩車をするように指示したり、観客を1人ステージに上げて1曲歌わせたり、ステージを降りて最前列にいるファンとムービーで自撮りをしまくったり、あらゆる方法でオーディエンスとつながろうとする姿が印象的だったし、それは多くのバンドにとって手本になるような光景だった。感動で涙を流す女性ファンがスクリーンに映し出されたとき、思わずもらい泣きしそうになった。 さらには、ゲストミュージシャンも登場。まずは、ほぼ同時間帯にSONIC STAGEでトリのパフォーマンスを控えていたAURORAが現れ、最新作『POST HUMAN: NeX GEn』から「liMOusIne」を世界初共演した。どうやら、彼女は自分の出番ギリギリにこの曲のためにMARINEまでやってきたようだ。 そして、「Kingslayer」ではもちろん、BABYMETALがゲストで登場。両者の関係性から考えて、同じ日に同じ会場に居合わせて共演しないわけがない。スクリーンには同曲を完璧な振り付けで踊るキツネ面の3人の姿が映し出され、リアルの3人とシンクロしていた。こういった演出にも彼女たちへのリスペクトが感じられる。曲の最後には、彼ら主催のフェス「NEX_FEST」で観たのと同じようにオリヴァーが3人それぞれとハグ。もはやほほえましい。新作の制作に深く関わっているDAIDAI (Paledusk)との共演もあるかと思ったが、これは実現せず。でもなんとなく、別の機会にとっておいているのでは、という気もした。 ほかにも触れたいことはあるのだけどキリがない。とにかく、名実ともにBRING ME THE HORIZONがロックシーンの頂点に立つ姿を目の当たりにした。オリヴァーは数年前、ここ何十年もロックシーンにアイコンがいないことを指摘したことがあったが、ついに自分たちが日本でもその座についたのだ。そういった意味でもサマソニのヘッドラインのステージは、非常に大きな意味をもつパフォーマンスとなった。最後、オリヴァーは「またすぐに会おう」と言っていた。彼らの場合、これってただの社交辞令ではないんだよな。本当にまたすぐに来る気がするし、来てほしい。 取材・文:阿刀大志 (C)SUMMER SONIC All Copyrights Reserved