GDPでみる、株価上昇と経済成長率の関係とは?
15日に発表された日本の国内総生産(GDP)統計は、(1)足元の日本経済が堅調に推移していること、(2)バブル崩壊後の高値を更新した株価水準に違和感がないこと、この2点を確認させる結果でした。(1)は実質GDP、(2)は名目GDPの議論になります。
実質GDP成長率と名目GDP成長率からわかること
7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.4%と、市場予想に概ね一致しました。4-6月期の+2.6%からは減速したものの、前期比では7四半連続のプラス成長となり、日本経済の底堅さを再確認させる結果でした。内訳は個人消費が▲1.8%と7四半期ぶりに減少した反面、輸出(寄与度+6.0%)が明確に反発し、設備投資(前期比年率+1.0%)と在庫(寄与度+1.0%)も増加しました。 全体の成長率から在庫寄与度を差し引いた最終需要は年率+0.4%へと減速したものの、10-12月期に個人消費の反発が期待されることを踏まえると、減速は一時的事象と判断されます。個人消費は天候に恵まれた4-6月期に実力以上の伸びを示した後、7-9月期は長雨の影響などから実力以下の水準に抑制されましたが、10-12月期は所得見合いの増加が期待されます。実質雇用者報酬(≒賃金)は前年比+1.6%と堅調ですから特殊要因さえ無ければ、消費は反発に向かう可能性が濃厚です。 このように日本経済は1%程度とされる潜在成長率を明確に上回る成長軌道を維持しています。潜在成長率とは長い目でみた日本経済の「実力」ですから、それを上回っているならば、景気が強いと判断するのが自然でしょう。
名目GDPは前期比+0.6%、同年率+2.5%、実額は546兆円でした。前年比では19四半連続でプラス成長が達成されており、水準は直近のボトムであった2011年4-6月期を+12.4%、これまでのピークであった1997年1-3月期を+2.4%上回っています。名目GDPは経済を金額ベースで捉えた概念で、幅広い意味においての企業収益にリンクしますから、結局のところ企業業績が好調という結論になります。従って、名目GDPが過去最高を更新したことは、日本株が1996-97年の水準を突破し、バブル崩壊後の高値を更新したことに符合するというわけです。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。