「とにかく気のいい場所!」と直感で湘南の土地を購入。天井高5mの撮影スタジオを併設した海辺の別荘の魅力とは
小さな山と谷が繰り返す穏やかな沿岸の町、湘南の葉山エリア。その小高い丘の上に立つのが、建築家・大堀 伸さんが手掛けた『house in Hayama』です。 この建物は、ただのプライベートな週末住宅ではありません。広告のグラフィックなどアートディレクターを務める建て主のSさんは、ご自身の仕事場や撮影スタジオとして、シェアできる別荘を構えることに決めました。 【写真で眺める】湘南の景色を120%楽しむために。建築家が別荘の設計で工夫したポイントは?
絶景を生かしながら公私も分けやすい合理的な分棟型プラン
日中を通して光が差し、海からの風が優しく吹き抜ける――。「とにかく気がいい、その直感で決めました」 初めて土地を訪れたときの印象をそう振り返るのは建て主のSさん。約400坪の敷地は海に向かって傾斜する丘のようになっており、見晴らしを遮るものがない開けた環境。 「湘南エリアになじみがあるわけでも、本腰を入れて別荘地をまわっていたわけでもなかったのですが、たまたま出合ったこの土地が一目で気に入りました」 設計の依頼を受けたのは建築家の大堀 伸さん。2人の縁は約20年前、大堀さんが独立して初めて手掛けたプロジェクトがSさんの都内の自宅だったことに始まります。 Sさんの今回のリクエストは、家族と気持ちよく過ごせる週末住宅というだけでなく、撮影スタジオも兼ねたいという少し特別なもの。 Sさんはアートディレクターという職業柄、自分自身の仕事で利用できる空間にしつつ、普段使っていないときにはスタジオとして貸し出すことができる形を希望しました。
2棟の中間にあるデッキテラスは心地よい潮風の通り道に
大堀さんが導き出した答えは明快。テラスを挟んでアトリエ(スタジオ)と住居スペースを分棟型にするプランです。 すべての空間を景色側へ向かって開きながら、さらに建物の角度を「く」の字に曲げることで、アトリエと住居棟で異なる風景を楽しめるように計画しました。 「敷地面積が広いはといってもほとんど崖のような立地でしたから、建築は上方に建てることは自然に決まりました。 等高線に素直に沿って設けたのが住居棟で、ここからは山間の穏やかな街並みが眺められます。もう一方のアトリエは海に正対するように構え、絶景を堪能できるようにしました」 アトリエは約60㎡、天井高5mという巨大な白い箱。めいっぱいに設けた7×4mの大開口が圧倒的な開放感をもたらしています。 それとは対照的に、住居棟は落ち着いたコージーな空間に。