映画『ナミビアの砂漠』河合優実にインタビュー
好意を寄せてくる男性をことごとくワイルドに振り回すカナ。一方で、よく知らない他人の前では借りてきた猫のように大人しくなることも。 「恋人ハヤシ(金子大地)の家族の集まりに向かう前、カナは彼に『手土産とか要るよね?』と聞いて『要らないよ』と返され、『でも非常識な人だと思われたくない』って言うんです。この一言が『そういう感覚もあるんだ!』と新鮮に感じられ、カナを考える上でのヒントになりました。ただハチャメチャに生きているのではなく、彼女なりのモラルがあるんだなって。そう思いながらハヤシのお母さん(渡辺真起子)と接してみたら、普段の自由奔放なカナと違い、頑張ってちゃんとしようとする仕草が自然と多くなりました」 文化的に洗練された両親のもとで育ったハヤシ。カナとの間に存在する社会的ステータスの隔たりは、かなりシビアに表現される。 「たとえばハヤシのお母さんが言う〝インター〟が、インターナショナルスクールの略語だと理解できないとか、ああいう瞬間はやっぱり勝手に傷つくというか。〝私が持っていないものを持っている人たちだ〟と感じたはず。私自身、別に見下されたわけではないんだけど、誰かにちょっと劣等感を抱いた日の帰り道って、すごく身に覚えがあって。邪険にされたらムカつくこともできるのに、相手が優しいのでそれもできない。だからカナも余計、自分を惨めに感じたんでしょうね」 どんなに深刻なシーンでも、なぜだか終始コミカルさを伴うのが、カナというキャラクターの魅力だ。ドラマ『不適切にもほどがある!』をはじめコメディでも注目されている河合だが、芝居とユーモアの関係性はどう捉えているのだろう。 「笑わせることは、演じるモチベーションのひとつですね。私、映画『フランシス・ハ』が大好きで。ダメダメな主人公が真剣に生きる姿がチャーミングで、あからさまなコメディじゃないのにどこか可笑しい。そんな作品に惹かれます。『ナミビアの砂漠』の台本を読んだ時も、そういう試みができるんじゃないかとうれしくて。現場で実際に試行錯誤してみると、山中さんも米倉さんもみんな面白がって笑ってくれた。なんか人が本気になっているさまって、ユーモラスだったりしますよね」 もしかして、みんながかしこまっている場で、一人だけつい吹き出しそうになるタイプ? 「まさにそうです!まわりと一致しないお笑いセンサーが備わっているみたいで。ついさっきも全員が静まり返ったエレベーターの中で内心、〝もし今ここで大声を出したらどうなるんだろう?〟なんて想像してました(笑)」 独自の感性を覗かせた河合に最後、GINZA10月号の巻頭特集「音楽とファッション」にちなみ、ヘビロテしている音楽や、スタイリングが気になるアーティストを聞いてみた。 「よく聴くのは、折坂悠太さん、柴田聡子さん、カネコアヤノさん、中村佳穂さん。中村さんはファッションもとびきり自由で、時にエッジィ、時にナチュラルと、いろんなジャンルにトライされていて。いつも可愛いなと思いながら見ています」