「美人すぎて普通の役は無理」「整形しすぎ」と言われてきたニコールの大復活【SPURセレブ通信】
新たな全盛期をもたらした役
なにより、あらたな代表作となったのが、大ヒット作『ビッグ・リトル・ライズ』だ。女性原作者を口説きおとして製作した本作は、中年女性俳優の豪華アンサンブルドラマ。エミー賞を獲得に輝いたニコールが演じたのは、完璧なリッチ妻とされながらDV被害を隠しているセレステ役だ。批評家エミリー・ナスバウムからは「生々しい感情表現」に専念する俳優が多いなか「人間が仮面をかぶっているさま、その裏の隠れた感情を観客に察知させる演技」に長けた稀有な演者だと称賛された。そして、似た被害経験を持つ女性たちから「複雑な心情を表現してくれた」と感謝されていった役でもある。 ニコール・キッドマンは、今でも親しみやすい「普通」の役はあまりやっていないかもしれない。それでも、女性像を進化させて、映画史に刻まれる名優となったのだ。 2024年、ニコールにアメリカ映画協会生涯功労賞を授与したメリル・ストリープは、サラブレットと呼ばれてきた後輩を北欧神話の戦士ヴァルキリーに例えた。 「『ビッグ・リトル・ライズ』でのニコールの演技は、見たことのない凄まじいものでした。女性俳優がすべてをさらけだし、人間の本質を問う未知なる深い暗闇に飛び込むと…勇敢だと言われがちです。しかし、その行為の源は愛ではないでしょうか。彼女は演技を愛している。私からすれば…渇望と好奇心と無謀さの融合、それこそ俳優が持ちうる最大の資産です。あなたはそれを持ってるのよ、ニコール」 【辰己JUNK】 セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)