Tommy february6、フィッシュマンズ、Lamp、THE BACK HORN……海外でリバイバルヒットする国内バンド
Lampは月間リスナー200万人超えで圧倒的人気に
2000年に結成されたLampも、今ではよく知られた海外で再評価された日本のバンドだ。Lampは、ボサノバを基軸としながら、フォーク、サイケ、AORなどの要素を織り交ぜたサウンドで長年にわたり国内外のコアな音楽ファンの間で密かな人気を集めていたが、その人気が海外で広がり始めたのは、2010年代に入ってからだ。 Spotify、YouTube、SoundCloudなどのストリーミングサービスを通じて徐々に広がり始めたLampにとって大きな転機となったのは、2021年にTikTokで「ゆめうつつ」が大きなバズを呼び、爆発的な人気を獲得したこと。同曲は、現在Spotifyで8500万回以上も再生され(2024年8月22日現在)、Lampのレパートリーの中で最も人気のある楽曲となっており、TikTokやYouTubeには海外ユーザーによる演奏動画も多数投稿されている。また、同曲を収録した2008年のアルバム『ランプ幻想』からは、「二十歳の恋」や「密やかに」といった楽曲も人気を集めている。 さらに2004年のアルバム『恋人へ』に収録されたタイトル曲「恋人へ」も、2023年のTuneCore Japanによる『Independent Artist Awards』で「Japan to Global (2022) - 海外で最も聞かれた国内アーティスト」部門にノミネートされるほどの人気を獲得しているが、このようなLampの人気の高さは、Spotifyの月間リスナー数にも表れている。2024年8月時点で約228万人という数字は、同時代のメジャーアーティストであるTommy february6(約26万人)やフィッシュマンズ(約22万人)と比較しても、文字通り桁違いの人気を誇っている。また、そのような海外人気から、今年8月末より行われる日系アメリカ人シンガーソングライター Mitskiの北米ツアーのサポートアクトにも抜擢。これはLampにとって初のアメリカ公演となる。 その他にもTHE BACK HORNが今年3月にInstagramに投稿した「コバルトブルー」(2004年)のMVのリール動画にパティ・スミスやエリカ・バドゥが反応。それが追い風となり、投稿後約10日間で1460万回再生に到達するほどのリバイバルヒットとなった。 また、2000年に発売されたゲーム『ROOMMANIA#203』に登場する女性ユニットとして結成されたセラニポージ(Serani Poji)も過去の音源が発掘され、リバイバルヒットしたアーティストだ。同ユニットは、昨年配信が開始された「スマイリーを探して」や「ぴぽぴぽ」がTikTokで10億回再生を突破するなど、海外を中心に話題を集めた。これを受けて、今年4月にはゲームに先駆けて1999年に発売された1stアルバム『manamoon(まなもぉん)』も配信開始されている。 このように見ていくと、Y2Kの日本の音楽が海外で再評価される現象は、世界的なY2Kリバイバルというポップカルチャーのトレンドと、音楽配信プラットフォームやSNSの普及が相まって生まれたものと考えられる。加えて、近年のシティポップやアニメ主題歌の海外ヒットによって、かつてはJ-POPが海外で人気を獲得する上で障壁とされていた言語の壁が徐々に解消されつつある。これにより、日本語の歌詞を持つ楽曲でも、その音楽性や雰囲気を通じて、海外リスナーの心を掴むことが可能になっていることも、この現象を後押ししているはずだ。 今後、このムーブメントがシティポップブームのような大きな規模にまで成長するかどうかは未知数だが、日本の音楽の多様性と質の高さが、言語や文化の壁を越えて評価されている事実は、日本の音楽業界全体にとって大きな励みとなるだろう。にわかに本格化の兆しを見せているY2KのJ-POPリバイバルだが、次にどのようなアーティストや楽曲が再発見され、世界中のリスナーの心を掴むのか。この新たなムーブメントから目が離せない。 ※1:https://rateyourmusic.com/charts/top/album/all-time/incl:archival,soundtrack/only:live/#pos1 ※2:https://natalie.mu/music/pp/fishmans ※3:https://rateyourmusic.com/charts/top/album/all-time/
Jun Fukunaga