中国オンラインショッピングの弊害、老齢女性の自宅は不用品の山
【東方新報】定年退職した上海市の女性がオンラインショッピングにはまり、本人いわく1年余りで百万元(約2165万円)以上を費やしたというニュースを、上海広播電視台(SMG)が報じた。 しかも、その女性は宅配便の包装を開けもせず放置し、自宅は宅配便の箱が山積みとなり、出入りするにも箱をよじ登らなければならないほど、寝る場所もない状態だという。 迷惑しているのは隣人で、宅配便の中には生鮮食料品もあり、それらが腐って悪臭を放っている。 女性はなぜ届いた商品の箱を開けないのだろうか? 彼女はその理由を「私は同じ物をたくさん買っているのよ。親友たちにあげるためよ」と話している。彼女はやはり一種のオンラインショッピング中毒症だと言えるだろう。 もしも細かく篩に掛ければ、オンラインでの買い物の大部分は不要不急な品物で、甚だしくは精神的な満足感を得るための買い物で、外部刺激で消費者が買い物に誘導されただけだ。かなり非理性的な感情が混じっている。 ところで、オンラインショッピングに関わる「消費心理の飽和状態」を詳細に仕分けすると、少なくとも四つの「病状」の進展段階があるように思われる。 最初の病状は「純粋なインターネット中毒」だ。2時間スマホで買い物をし、疲れ果てて寝る前に買い物カゴには大きな山が出来ている。しかし、お金はまだ払っていないという最終的な抑制は利いている。翌日目を覚ましてからすぐに買い物カゴを空にするか支払いキャンセルをする。ところがその日の深夜には、またスマホで買い物サーフィンを始めてしまい、ゼロサムゲームの繰り返しとなる状態だ。 第二の病状は「自己強化」だ。朝からずっとオンラインショッピングのことが頭から離れず、いったんオンラインを始めると、同じ品物をさまざまなショップで検索し始める。それらをショッピングカートに入れ、まるで自虐的な気分で繰り返し価格を比較し、レビューを読む。プラットフォームからも絶えずその品物を薦めてくるし、安値情報も出て来る。しかし直ぐには買わず、ポップアップウィンドウを見続けている。しかし最後には自制心は崩れ、その品物を買って一段落するが、また次の(買い物への)渇きが醸成されるという状態だ。 第三の病状は「欠乏恐怖症」だ。毎日何かが足りないと感じている。気候が寒くなると、まず先にタンスを見ることもせず、すぐにスマホで暖かい服を検索し始める。皿が1枚割れたらすぐに皿を買うが、次にまた割れたら困ると心配になり、一度に10枚も買ってしまう。足りないということに対する心理的な脅迫観念だ。 第四の病状は「究極を求める心理」すなわち「買い物症候群」だ。これまでの三つの病状が合わさった病状で、この心理は最も御しがたい。安い物を買えばもっと買いたくなる。高い物を買えば、もうコスパの良い廉価品は買えない。良い物を買えば、もっと買っておきたくなるし、失敗な品物を買ったら良い品物を買いなおして家に置きたくなる。生活の憂鬱は「買う」の一文字で解消しようとする。 この中毒症状が進むと、見た物は全部買ってしまいたくなる。買った商品の貯め込みが精神的な支柱になってしまう。 家中にあふれる商品が全部自分の物だという充足感は、孤独な老齢者に安心感をもたらすのかも知れない。商品はより素晴らしい生活へ誘導する媒体となり、消費者に「ステキな幻影」を見せてくれる。梱包を解かない商品は真新しい完全な品物で、世界から自分への贈り物のようだ。 老婦人の愚かさや貪欲さを笑ってはいけない。私たち一人ひとりがインターネットのビッグデータによって作り出された「拝物教」(物に対する呪縛的心理)から逃れることは、なかなかに難しい。ただその程度が人によって異なるだけなのだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。