「金メダルを取っても意味がない」…天才科学者・山中伸弥が語る、日本特有の“風潮”が及ぼす科学への「痛すぎる影響」
理系学生が知らない「第三の選択肢」
羽生 研究者の道を選びにくいのは、なかなか将来像が描きにくいからじゃないでしょうか。お医者さんのほうは、医学部に入って、医師免許を取って、研修医になって、お医者さんになってというモデルがありますが、研究者がどういう道筋で、どういうふうに生活していくのかは、なかなか見えません。 山中 それは確かにそうですね。科学の博士課程に在籍する学生の多くは、大学や大企業で研究を続けることを望みますが、科学の知識を生かしてプロになる選択肢は他にもあります。たとえば、科学コミュニケーターや科学ジャーナリスト、教育者です。 羽生 アメリカでは多くの学生がそういう道に進んでいくようですね。 山中 はい。生命科学もAIもそうですが、科学がすごく高度化してさまざまな社会問題を惹き起こしている今の社会では、先端科学の知識とその問題点を分かりやすく人々に伝えて、いわば科学と世の中の対話を促すような仕事がますます重要になってきています。だから、僕たちが学生たちにそうした仕事の選択肢をもっと指し示していくことも必要です。 『 日本がアメリカに負ける原因の正体は、自らが作り出す「死の谷」だった…天才科学者・山中伸弥が語る、日本が抱えるヤバすぎる「弱点」』 に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治