【ガザ衝突の解決】パレスチナ国家樹立は米国の苦肉の策 イスラエルと中東諸国が受け入れられない背景
フィナンシャル・タイムズ紙の1月23日付社説‘Ending the cycles of violence in the Middle east’が、米国の後押しでアラブ諸国がイスラエルの承認と引き換えにパレスチナ国家の樹立を取引するという新たな中東紛争の解決案を用意しているが、この解決案の実現は困難であるが必要だとし、まずイスラエル側がパレスチナ国家の樹立の必要性を理解するべきである、と述べている。要旨は次の通り。 アラブ諸国は、ガザを巡る衝突を終わらせ持続的な平和の基礎を築くプランを考えている。米国が支援するこのプランは、イスラエルに対してサウジアラビアを含めたアラブ、イスラム諸国との関係正常化という報酬を与える代わりにイスラエルは、パレスチナ国家の樹立のための不可逆的なコミットをするというものだが、実現するのは極めて困難だ。 まず手始めに、イスラエルのハマスに対する攻撃を終わらせ、ハマスは人質を解放しなければならない。しかし、ハマスは戦い続けており、ネタニヤフ・イスラエル首相は、ハマスとの恒久的な停戦を拒否、ハマスの壊滅のみが人質を取り返しイスラエルの安全を保証する、と言い続けている。 さらに、ネタニヤフは、二国家共存による解決案について話すことすら拒否している。去年の10月7日に起きたハマスによる攻撃を受け、ネタニヤフ以外のイスラエルの主な政治家達もパレスチナ国家樹立を支持することは無いであろう。 イスラエル側の信頼を回復し、パレスチナとイスラエルの安全を保証するためには、パレスチナ指導部を根本的に立て直さないといけない。また、ハマスの軍事力はかなりのダメージを受けているが、引き続き二国家解決には反対し続けるだろう。
このような困難な状況の中でイスラエル側の考えをパレスチナ紛争の持続的な解決に変えさせることが極めて重要だ。サウジアラビア他の諸国がイスラエルとの関係を正常化するというのが(イスラエル側の態度を変える数少ない)インセンティブとなる。 問題の解決のためには、11月の米国の大統領選挙の前に米国の継続的な、かつ、決意に満ちた外交的な努力が、イスラエルとパレスチナ双方の責任有る指導者とともに必要とされる。そして、米国と欧州諸国は、ニンジン(アラブ諸国のイスラエルとの国交樹立)だけでなく、ムチを振るってイスラエルの指導者達にパレスチナ国家の樹立は、彼らの利益となることを理解させなければならない。 これは、ハマスと過激主義者達に対して対抗する唯一の方法であり、パレスチナ人が彼らの未来に希望を抱くことを守る方法である。イスラエルは、ハマスに対して大きな打撃を与えているが、その運動やイデオロギーを取り除くことは出来ない。それが出来るのはパレスチナ人だけだ。イスラエルの指導者達が現実を無視すれば、それは際限の無い暴力の連鎖を宣告することになる。 * * *