「空気まで緑」一面が苔のじゅうたん、新緑の季節も魅力佐賀・神埼の九年庵
国内旅行でも人気の高い九州地方。中でも福岡、長崎は観光客が多く訪れるエリアだ。その両県に挟まれた佐賀県だが、かつて“文明ロード”と言われた長崎街道に沿って多くの宿場を有し、古くは弥生時代からの遺跡も残っている。日本の国の成り立ちをうかがわせるそんな歴史のあるまち、佐賀の神埼を訪ねた。 (2017年3月撮影)
明治時代の佐賀の実業家、伊丹弥太郎が造った別荘と、9年の歳月を費やして築かれた6,800平方メートルの庭園、「九年庵」。平成7年に国の名勝に指定されたこの庭園は、毎年紅葉が美しい秋の11月15日から23日までの9日間と、新緑の春に一般公開されている。 この庭園の魅力は、入母屋葦葺の屋根や真竹を用いた濡縁など非常に趣のある邸宅と、じゅうたんを敷き詰めたような苔の緑、庭園に広がる鮮やかな紅葉のグラデーションが絶妙なところである。秋の公開には7~8万人の観光客が訪れるという。 訪ねた3月は、その邸宅の補修作業の真っ最中だった。特別に許可を頂き、庭園を見せていただいた。まだ、草木はこれから芽吹くところだったが、庭園を這うスギゴケは公開時期には美しい庭園の姿を見せてくれる兆しが感じられた。 紅葉の時期はもちろんだが、春の九年庵がおすすめだと地元の人が話してくれた。人出も少なく、ゆっくり見て周れるという。「新緑が障子まで染め上げ、空気まで緑に感じますよ」と教えてくれた。 今年の春の公開は5月3日(水)から5日(金)の3日間。