円は対ドルで一時155円台に下落、日銀総裁講演を受け円売り直し優勢
(ブルームバーグ): 18日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=155円台に下落。日本銀行の植田和男総裁が午前に行った講演について、利上げを急ぐような発言はなかったとの見方から、円を売り直す動きが優勢になっている。市場は午後の総裁会見も見極める姿勢だ。
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、植田総裁の講演について、「これまでの発言とあまり変わらず、利上げを急ぐような感じはなかったため、先週末以降に円が買われていた反動が出ている」と指摘する。もっとも、午後の会見で踏み込んだ発言も警戒され、「円の高値を試す動きが終わったかどうかまだ判断できない」と述べた。
植田総裁は18日午前、名古屋市の金融経済懇談会で講演し、金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは、「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していくことに資するとの見解を示した。
15日の海外市場では、米国で予想を上回る小売売上高を受けて利下げ観測が後退、米10年国債利回りは一時4.50%程度と5月以来の水準に上昇した後、4.44%付近に戻していた。ブルームバーグ・ドル指数は6営業日ぶりに下落。円は一時153円台後半まで買われた。
大和証券の石月氏は、「トランプトレードの巻き戻しとも言える動きだが、株安を背景にリスク回避的な円買いもあり、きょうの植田総裁の発言を警戒していた部分もあったのではないか」との見方を示した。
日銀は7月のサプライズ利上げが市場の混乱につながった教訓から、12月18、19日の会合で利上げを検討する場合、事前に地ならしを行うのではないかとの見方が市場でくすぶっている。
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Saburo Funabiki