「すべての人のための文化施設」とは 神奈川県民ホールでシンポジウム
今年4月に施行された障害者差別解消法を受け、神奈川県民ホール(横浜市中区)は9月6日、障害者も利用しやすい文化施設のあり方を考えるシンポジウム「すべての人のための文化施設であるために」を開いた。 今年度の推進事項にバリアフリーを掲げる県民ホールでは今夏、ディスレクシア(読み書き障害者)、知的障害者、肢体不自由者、聴覚障害者の各団体の国際大会や全国大会を相次いで開催。パネルディスカッションでは、施設の予約から当日必要な対応に関する相談時の様子、利用後の感想まで、施設側と利用者側の双方がざっくばらんに話し合った。
これまで取り入れた対応を実演
当日は会場の大ホール最前列5列分の椅子を取り払い、車椅子の人が使えるスペースを広く確保。 上手には要約筆記のためのスペースを設け、手話だけでなく、スクリーンに文章を投影する形でリアルタイムに講演内容を伝えた。また、講演開始3分前の合図は、ブザーだけでなく、照明をゆっくり点滅させることで、聴覚障害者にも分かるようにした。地震などの緊急時用には、スクリーンに文章で映せるお知らせも用意した。 事前に配布されたパンフレットには、ディスレクシアにも読みやすくするため装飾の多い明朝体は使わず、文節ごとに間を空けたり、文章を四角い枠で囲んだりするなどの工夫を施した。
事前に情報が得られることが大事
神奈川県肢体不自由児者父母の会連合会会長の石橋吉章さんは、ウェブサイトに障害者の利用する設備の詳細が掲載されていなかったことを指摘。普段使い慣れた地元の公共施設は設備についても知っているし、顔見知りの職員に相談できるが、勝手がわからない県の施設は、事前に情報を得られることでより手間を省くことができ、安心できると話した。1,000人規模の大会で車椅子の使用者も多く参加するため、来場者の多くが乗り換えに使用する横浜駅や県警にも、事前に協力を取り付けたという。また、登壇するゲストも車椅子を使用しているため、県議会や県行政に要請し、舞台に上がるための階段昇降機の設置が実現した。 情報が必要なのは、障害者にとどまらない。ディスレクシアの人たちが生き生きと暮らせるよう啓発、支援を行うNPO法人EDGE会長の藤堂栄子さんは、国際大会でマレーシアやシンガポール、イギリス、ハワイなど各国からの参加者が来たが、食堂にハラル食の用意があることが事前に分からなかったと話した。実際はあったにも関わらず、結局違うメニューを頼んでしまったという。
ソフト面での対応を
県の文化施設は古いものが多く、設備に使う予算も限られる中、ソフト面でより柔軟な対応が求められる。県民ホールの駒井由理子さんは、その場その場の対応で終わらせず、スタッフが落ち着いて対応できるよう、理解や情報共有を進めることや、体験してイメージすることの重要性を語った。 (齊藤真菜)