「なんでも分かろうとするな」――脚本家・黒岩勉が“神”ドラマ『全領域異常解決室』に込めたメッセージ
■“八百万の神”がいる日本人の感覚だから受け入れてもらえた
毎週水曜日の夜、回を追うごとに大きな盛り上がりを見せてきた『全領域異常解決室』(フジテレビ系/毎週水曜22時)。最終回を前にした先週9話の放送では、後半に上がったギアがさらに加速。「これがゴールデンの連ドラ!?」といい意味でビックリするしかない、非常に挑戦的な内容が放送された。クランクイン!では、 “八百万の神”を現代に蘇らせた脚本家・黒岩勉氏に取材。本作に込めたテーマや、人気作を次々生み出す黒岩氏の脚本づくり秘話が明らかに。 【写真】見つめ合う興玉(藤原竜也)と小夢(広瀬アリス) 『全領域異常解決室』最終回場面カット ――9話でまたとんでもない展開がありました。改めて、ドラマが生まれた背景をうかがえますでしょうか。今回のこの壮大なテーマを作るにあたり、『アベンジャーズ』や『X-ファイル』といった、海外作品からの影響はあるのでしょうか。 黒岩:あくまで今回の入り口は日本神話です。神様をメインにしたドラマを作りたい。しかも最初から「神様」と謳ってはいないものをやりたいと。違うもの、つまり“全領域異常解決室”で包んで、神様を隠してスタートさせた。海外作品に関しては特に意識はしていませんが、『X-ファイル』も見ていたので、潜在的な影響がないとは言い切れないでしょうね。 ――日本の神様、“八百万の神”は独特な存在です。ギリシャ神話も多くの神がいますが、日本は本当に身近に神様が多い。だからこそ本作は面白いです。 黒岩:日本の神様は懐が広いですよね。“八百万の神”がいる、すべてのものに神が宿っているという感覚が、日本人の根底にはある。今でももしかしたら自分の回りに神様がいるかもしれないと考えたとき、僕の中にも、「まんざらあってもおかしくないな」と思える感覚があるし、5話が終わったところでのSNSの反応を見ていても、みなさん「ありえるかも」と受け止めてくれていました。 ――そうですね。 黒岩:6話での興玉(藤原竜也)の実は「僕も神です」という展開も、どういう反応がくるのか正直、怖かったですよ。それが蓋を開けてみんな離れないどころか、むしろ面白がってくれた。本当にホッとしましたし、日本人の感覚だから受け入れていただけたのかなとも思います。 ――配信が盛んになっているのは、脚本づくりにも影響がありますか? 黒岩:作り方は変わってきますね。最初に大きな火をおこす必要はなくなってきているというか。とにかくトータルで考えていきました。 ――最初に、ラストまでの道すじを考えるわけですよね。 黒岩:全話を通して、ヒルコとは何者で、何をやっているんだと決めておかないと行き当たりばったりではやれません。そこは全部決めて、ヒルコが誰で、どういう思いがあって、誰が協力して、誰が出てくるのかと全部決めてから、それを10話どうやって配置していこうかと、ページをめくるタイミングをどこにしようかと考えていきます。 ――登場人物たちの名前にもヒントが入っています。どこまで出そうかという点も難しかったのでは。 黒岩:ちょっとした違和感はあるんだけど、「もしかして」というヒントは出していこうと思っていました。名前を見た時点で、神様が絡んでいるなと、分かる視聴者は分かるんですよね。蓋を開けた瞬間に1割ぐらいの人が「ああ、やっぱり」と思ってくれる世界のほうがみんな納得できる。誰も気づかないまま蓋が開いて、初めてパッと分かるのも気持ちいいけれど、神様だと言われた瞬間、誰かが気づいていたほうがハレーションが少ない。名前の付け方は、まさにそれにつきます。