吸空サイダー×シベリアンハスキー×毎晩揺れてスカート『Grasshopper vol.27』レポート「こんな楽しい月曜日は初めてかもしれない」
熱いライブが続いた『Grasshopper vol.27』もいよいよトリの出番に。登場したのは、「NEW ROMANCE MUSIC」をコンセプトに掲げる4人組、毎晩揺れてスカートである。「ライブハウスへようこそ!」と尾崎凛(g&vo)が束の間の非日常へと手招きすると、両翼のまり(b)とイトウユウスケ(g)はステージを縦横無尽に跳ね回る。 エネルギッシュな立ち回りに触発されたオーディエンスは、一曲目「悪意戦争」のサビでリズムに合わせ手を左右に振り、一体感を高めた。続く「恋は不純」でもダンスビートは鳴り止まない。オーバーサイズのTシャツにトラックパンツを合わせ、メガネをかけた尾崎のスタイリングはどことなくナード的だが、しかしその表情を見るに、実はこのパーティーを誰よりも楽しんでいるようだ。3連符のフローを交えたHIPHOP的なアプローチでバンドの懐の広さを示しながら、狂騒空間を乗りこなしていく。 可憐な佇まいと目線でフロアを制するまり、身をよじりギターをかき鳴らすイトウ。彼らのステージングには、ロックバンドらしい不器用さが良い意味でまったく感じられない。その場の誰もが、「きみとわたしは天才だから」でのペースを変えるクラップを楽しみながら、その徹底したエンターテイナーっぷりに魅了されていた。根拠のない自信がみなぎる<きみとわたしは天才だから>のフレーズが、この夜、このライブハウスでだけは確かな真実味を帯びる。「もう一度会えるとしたら、この一言だけを」という言葉に導かれたのは、コーラスを効かせたギターリフが歌謡曲的な情緒を湛える「助けて会いたい」。<助けて会いたい>のリフレインが耳に焼き付き、終盤に繰り返される移調に、深く心地良く酩酊してしまった。 ここまで演奏されてきた楽曲たちが持つムーディさと祝宴感をミックスさせたような「あいつは江國香織であの娘を奪う」を終えると、これまで言葉少なだった尾崎がMC。「女がバンドをやってるとバカにされることってあるんですよ。だから、女性ボーカルで括られるのってあんまり好きじゃなくて。今日出てる3組は、そうやって舐められたりしんどい思いをしながら戦ってきたんだと思う」と本音を吐露する。そのフラストレーションは、ひりつくようなロックチューン「ぼくたちは無傷だ」でスパーク。途中、尾崎のギターの弦が切れてしまうが、そんなハプニングもお構いなし。最高速のままラストの「あいらびゅべいべー」へ。イトウがジミヘンよろしく背面弾きのギターソロを披露すると、ボルテージは最高潮に。<あいらびゅべいべー>の合唱でフロアとの境界線を取り払ってしまい、メンバーは満足気にステージを降りていった。 アンコールに応え再登場した尾崎は、「こんな楽しい月曜日は初めてかもしれない。また憂鬱な日々が明日から始まるけど、嫌になったらまたライブハウスに来てください!」と笑顔で語る。この日二度目の「悪意戦争」が、先ほどよりも大いに奔放で熱くパフォーマンスし、轟音の余韻の中で一日の幕を下ろしたのだった。 Text:サイトウマサヒロ <公演情報> 『Flowers Loft × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.27』 11月25日(月) 東京・下北沢Flowers Loft 出演:毎晩揺れてスカート / シベリアンハスキー / 吸空サイダー <次回開催情報> 『Grasshopper vol.29 supported by チケットぴあ』 2025年1月20日(月) 東京・下北沢CLUB Que 開場18:20 / 開演19:00 出演:Lala / ミーマイナー / mill meals
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