常識をひっくり返すような着想で新しい局面をもたらすことを「コペルニクス的転回」と呼ぶけれど、その語源となった地動説をテーマにしたTVアニメが始まった。 「チ。―地球の運動について―」（NHK総合、土曜）というちょっと変わったタイトルは、ドラマというより科学番組のようでもある。知人がお薦めしてくれなかったら、見逃していたかもしれない。 物語は15世紀ヨーロッパの「P王国」が舞台。「C教」の教えによると、神様は世界の中心に地球をお造りになった。星も太陽も地球の周りを回っている。いわゆる天動説が世の常識。そんな中で地動説を研究する天文学者を描いている。 配信で見始めたら、肩越しにパソコンをのぞき込んだ小学6年の次男が「これ知ってる」という。それならば一緒に見ようよ、と誘ったが断られた。「嫌だ。友達が『えぐい』って言ってたし」。何だそれ、と思ったけどすぐに分かった。最初のシーンから拷問だもの。爪をはがすとか、子供にはちょっとつらいよね。 主人公のラファウは、勉強がよくできて、世の中をクールに眺めている子供。飛び級で行くことになった大学で神学を学ぶ予定だったが、フベルトという天文学者と出会う。 フベルトが証明しようとしている地動説は、P王国では悪魔崇拝と同じく禁忌とされている。捕まれば拷問されて改宗を迫られ、2度目の摘発は即死刑。でも彼は研究を止めようとしない。天動説に基づく複雑な天体運行図を指して、少年に聞く。「君は美しいと思ったか？」 その言葉に刺激されて地動説を検証するラファウ。導き出されたのは太陽を中心にした軌道に惑星が並ぶ配列図。現代の私たちには見慣れたものだけど、新発見という文脈で改めて示されると、じつにシンプルでビューティフル。 キャラは立っていて物語の運びもよく、「私は美しくない宇宙を生きたくない」「怖くない人生などその本質を欠く」といったせりふもカッコいい。大人はかなり楽しめそう。（ライター　篠原知存）