現存する望遠鏡だけで「ホーキング放射」をブラックホールから検出できる日が来るかもしれない
■3年以内に起こる可能性のある超大質量ブラックホールの合体イベントが検出のねらい目か!?
研究グループは、ブラックホールの欠片たちの存在およびこうした天体に起因するホーキング放射は、いくつかの観測手段で確認できることを示唆しています。星の質量ほどのブラックホールはアメリカの「LIGO」、イタリアの「VIRGO」、日本の「KAGRA」といった重力波望遠鏡によって検出できますし、超大質量ブラックホールの合体に伴う重力波は「パルサータイミングアレイ(Pulsar Timing Array)」によるパルサーの観測を通じて検出できるといいます。また、ガンマ線バーストはスペインのHAWC(High-Altitude Water Cherenkov Observatory)やアフリカの「HESS(High Energy Stereoscopic System)」といったガンマ線望遠鏡による追観測の可能性が開かれているようです。さらに、ブラックホールが蒸発するに伴って放出された素粒子のうち、電気的に中性であるニュートリノは銀河の磁場によって散乱されることなく地球に届くため、フランスの「ANTARES」や南極の「IceCube」といった検出器によって、ニュートリノに起因するチェレンコフ光の検出が可能だといいます。 研究グループによると、超大質量ブラックホールの合体であれば、地球上でもブラックホールの欠片たちに起因するガンマ線バーストを検出できる可能性があるといいます。ブラックホールの欠片たちから放射されるガンマ線バーストの強さは、星の合体に伴うガンマ線バーストよりもずっと強いと考えられることがその理由です。研究グループは、3年以内に超大質量ブラックホールの合体が観測される可能性が示唆されている活動銀河核「SDSS J1430+2303」に注目しており、ホーキング放射の痕跡として重力波やガンマ線バーストに関する物理量からホーキング放射や原因となったブラックホールの欠片たちの存在をさかのぼれる可能性に期待を寄せています。 Source Phys.org – Detecting ‘Hawking radiation’ from black holes using today’s telescopes Cacciapaglia, G. and Hohenegger, S. – Measuring Hawking Radiation from Black Hole Morsels in Astrophysical Black Hole Mergers (arXiv) Perna, R. et al. – Limits on electromagnetic counterparts of gravitational wave-detected binary black hole mergers(arXiv) Hawking, S. – Black hole explosions?(Nature) Hawking, S. – Gravitationally Collapsed Objects of Very Low Mass(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society) Okounkova, M. – Revisiting non-linearity in binary black hole mergers(arXiv) Space.com ‐ Could these black hole ‘morsels’ finally prove Stephen Hawking’s famous theory?
Misato Kadono / sorae編集部