センバツ高校野球 クラーク、延長で涙 先制実らず惜敗 /北海道
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕し、道代表のクラーク記念国際は九州国際大付(福岡)に延長十回の末、2―3で惜しくもサヨナラ負けした。クラークは創部3年目に出場した2016年夏以来の甲子園で、悲願の初勝利にあと一歩及ばなかった。【三沢邦彦、山口一朗】 雨にけぶる甲子園で、初のセンバツに挑んだクラークは、相手投手の立ち上がりを攻めた。一回表2死二塁、4番のエース左腕・山中麟翔(りんと)(3年)が捉えた打球はセンターの頭上を越え、先制の適時二塁打となった。一塁側アルプススタンドはいきなり熱気に包まれた。 山中の父伸吾さん(45)は「甲子園では絶対勝つと言っていた。普段は優しい子だが、グラウンドでは気持ちが入るようだ。頑張ってくれればそれだけでいい」。 新型コロナウイルス感染予防のためアルプス席の応援が1校1800人に限られる中、全国のキャンパスから生徒約1000人が駆け付けた。センバツでは3年ぶりに復活したブラスバンドの応援は系列の環太平洋大が担い、マーチングバンド部員が盛り上げた。 二回裏に2点を奪われ逆転を許したが、直後の三回表、先頭の新岡真輝(3年)の右前打を足掛かりに1死一、三塁の好機をつくると、藤野侑真(同)の三塁ゴロの間に同点に追いついた。 その後は、手に汗握る投手戦。二回途中からマウンドを任された辻田旭輝(あさひ)(同)が好投を続けた。「しっかりと真っすぐが低めに行き、内外の投げ分けや変化球でカウントを取り、高めのボールで三振を奪った場面は自分の投球ができた」。父拓也さん(49)は「子どもの頃から球が速く、捕球できる子がいなかったため捕手をしていた。投手は中学2年から。よくここまで来てくれた」と息子の雄姿を見つめた。 両チームともに攻撃の突破口を見いだせない展開。昨秋の地区大会でチームトップ打率だった1番・金原颯(3年)の父佳さん(48)は「チームが勝てるように、得点に絡めるようなバッティングだけを期待しています」と力を込めた。 だが、打線は四回以降沈黙。2―2のまま延長十回裏に突入した。1死一塁からヒットエンドランを決められ、一、三塁の大ピンチ。伝令役の白取太郎主将(3年)がベンチを飛び出し、カクテル光線に照らされたマウンドにナインが集まった。左打席には4番・佐倉俠史朗(2年)。初球、外角の変化球で打ち取った当たりは左翼線付近にフラフラと上がった。左翼の藤野が捕球し、本塁に送球したが、三塁走者が生還してゲームセット。 三浦雄一郎校長は「最後まで手に汗握る素晴らしい試合でした。これだけの試合ができるなら、次のチャンスは必ずつかめると確信しています」と期待を込めた。 ◇全国からチア集結 ○…アルプス席では通信制高校の特徴を生かし、全国のキャンパスをオンラインでつないで練習を重ねたチアダンス部「レイブス」が華やかな応援を繰り広げた。昨秋の全道大会優勝後に活動をスタートし、応援で使用する15曲の振り付けを覚えた。この日、顔を合わせるのは初めて。札幌白石キャンパスの新3年生、早坂まりなさんと浜香凜さんは「甲子園で応援できてよかった。選手には力いっぱい頑張ってほしい」と息の合ったダンスを披露した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇兄と亡父の意志継ぎ クラーク記念国際・越智飛王三塁手(3年) 「ここを甲子園だと思って思い切り振れ」。小学生の頃、亡き父と自宅車庫を改装した練習場でトス打撃を繰り返した。憧れの場所で、父のアドバイス通りのフルスイングをみせたが、そのバットから快音を響かせることはできなかった。 たくさんの思いが詰まった甲子園だった。父一久さんは2019年7月7日、急性心臓死のため46歳の若さで他界した。その13日後、兄健斗さん(20)がプレーしていたクラークは夏の北北海道大会決勝で敗れ、甲子園に届かなかった。スタンドで敗れた兄の姿に涙した。「父と兄のために甲子園に行く」と大志を抱き、クラークの門をたたいた。 この日、アルプス席で見守った健斗さんは「僕の夢の続きを引き継いでくれている」と弟の雄姿をたたえた。母千穂さん(47)は「感動しています。甲子園に出場してくれただけでうれしい。夏にまた、帰ってこられるよう頑張ってほしい」と更なる飛躍を期待した。【三沢邦彦】