（写真：福島民報）

　東日本大震災発生後に福島県内７市町が進めた津波被災地の防災集団移転で、住宅などの跡地の約３割が活用されず、景観の悪化や不法投棄などを招いている。跡地は地元市町が買い取っており、除草などの維持管理費も負担になっている。東京電力福島第１原発事故の影響が残る富岡、浪江両町は約５割が手つかずのままだ。政府は２０２５（令和７）年度で終了する第２期復興・創生期間内に津波被災地の復興事業完了を目指しているが、県は期間終了後も中長期的な支援が必要だと国に訴えている。 　防災集団移転を実施した７市町はいわき、相馬、南相馬、楢葉、富岡、浪江、新地。跡地の活用状況は【表】の通り。太陽光パネルの設置などが進んでいる南相馬市が８４・５％で最も高い。最も活用の進んでいない富岡町とは３９・３ポイントの差がある。 　跡地に住宅は建てられないが条件を満たせば工場や倉庫、太陽光発電施設、緑地などには使えるため、各市町は民間への売却などを進めている。ただ、原発事故の影響で福島県はいまだ復興の途上にあり、富岡町は跡地の一部を復興工事で生じた土砂の仮置き場として使用。浪江町は被災家屋の解体資材や廃棄物の仮置き場に一部を充てているため、十分な活用にまで至っていないのが実情だ。

　２０２２年４月施行の改正都市計画法で津波被災地での店舗や事務所、工場の建設の規制が強化されたのも足かせになっている。企業誘致は難航し、相馬市は今年４月から５月末にかけて公募したが手を挙げる事業者はなかった。新地町も同様の状況だという。 　活用が進まなければ除草などの維持管理費がかかる。７市町の維持管理費は年間合計約２５００万円。南相馬市は今年度の当初予算で約１４００万円を計上し、いわき市は約３５０万円、浪江町は約４００万円を費やしている。新地町では道路に面した跡地に雑草が茂り、見通しが悪くなったため交通事故防止の対応を迫られた。加えて深刻となっているのは不法投棄だ。相馬市では昨年度、自転車やテレビ、冷蔵庫などが活用されないままの跡地に捨てられているのが見つかり、公費で処分した。 　復興庁は自治体の跡地活用を支援している。市町村ごとに抱える個別の課題に対して職員が直接現場に出向くなどきめ細かな対応をしているが厳しい状況は打開できていない。政府は第２期復興・創生期間以降の復興の基本方針の中で地震・津波被災地域に関して「期間に復興事業がその役割を全うすることを目指す」と明記しており、期間後の事業継続は不透明だ。

　県まちづくり推進課は「福島県は原発事故の影響があり復興は道半ば。政府には中長期的な視点に立って津波被災地への支援に当たってほしい」と訴えている。