兄追う2年、堂々のマウンド 市和歌山・米田投手 選抜高校野球
甲子園初登板で4回1失点と堂々のデビューを果たした。第93回選抜高校野球大会第7日(26日)、2回戦の明豊(大分)戦に先発登板した市和歌山の米田天翼(つばさ)投手(2年)。23日の1回戦で県岐阜商を完封し、130球を投げたエース小園健太投手(3年)を温存する役割も担った。2年生ながら大役を務め、「初めての甲子園で緊張するかと思ったがいつもの力を出せた」と胸を張った。 【今大会のホームラン】 市和歌山には兄航輝(こうき)さん(19)の背中を追って進学した。航輝さんは2019年のセンバツでは主将としてチームを8強に導いた。夏の選手権大会予選で兄の最後の試合に駆けつけて応援。「(兄が)『いちこう(市和歌山)』のユニホームを着てプレーするのが格好良かった。俺もいちこうで野球がしたい」と、もともと岡山の私立強豪校へ進学予定だったが、中学3年の8月に決意した。 昨秋の新人戦3回戦で公式戦デビューすると、準決勝では航輝さんが3年間で一度も勝てなかった相手・智弁和歌山戦に登板。6回2失点と好投し兄の雪辱を果たした。昨秋の近畿大会準決勝・智弁学園(奈良)戦でも登板。しかし1回と3分の2を投げて4失点。その日の夜、航輝さんから「冬は自分に厳しく練習しないと甲子園に出ても投げさせてもらえないぞ」と厳しいアドバイスをもらった。 次の日の朝、前日に失点した数の10倍の40本、右翼から左翼のポール間を走った。また、冬場は投球フォームの改造も行った。「(軸足の)右足にためた力を左足にしっかり伝えられるように」と踏み出す左足の地面に付く位置が10~15センチほど一塁側寄りに開くようにしたという。キャッチボールからフォームを固め21年1月末ごろには「ボールの回転数が増え、球威も増しているように感じる」と手応えを感じていた。 試合前々日の24日夜に登板を告げられた。「(1回戦勝利後)次は自分が投げると思っていたので心の準備はできていた」と話す。航輝さんからは「楽しまないと後悔するぞ」と連絡をもらったという。試合では毎回走者を出しながらも三回まで失点なく抑えた。しかし四回、5球目の甘く入った直球を右中間スタンドに運ばれ、「全国では1球の甘さも許してくれない」と実感した。試合は好投する相手投手を打ち崩せず敗れたが「甲子園は楽しかった。直球で三振が取れるようになって、もちろん夏に戻って来たい」と力強く語った。【橋本陵汰、中島昭浩】