再編進む英字新聞、増える中国語新聞 外国語新聞のいまは?
朝日新聞社や毎日新聞社は紙の英字新聞をつくるのをやめた(注1)ものの、読売新聞社は英字新聞を作り続けている。"The Japan News"は2013年に"The Daily Yomiuri"から改題されたもので、主として読売新聞の翻訳記事や、通信社の配信記事によって紙面がつくられている。前日の読売新聞の社説が英文に翻訳されて転載の上、日本語原文も併記されている。こちらは"The Japan Times"よりは英文もかんたんであり、日本人の英語学習者も意識している。 また、日本経済新聞社は週刊の英字新聞"THE NIKKEI WEEKLY"を2013年まで刊行していたが、ウェブサイトと英字雑誌を融合させた英文メディア"Nikkei Asian Review"へと名前を変えた。 2013年は、日本の英字メディアにとって変化の年であったといえよう。 また、アメリカの経済紙"The Wall Street Journal"は毎日新聞系列の印刷所が、イギリスの経済紙"FINANCIAL TIMES"は日本経済新聞系列の印刷所が印刷し、都心部の駅売店で販売され、また宅配も行われている。都心部では当日朝届くものの、地域によっては夕刊の時間帯、もしくは翌朝配達または郵送で届く。なお、"FINANCIAL TIMES"は2015年に日本経済新聞の傘下になった。 英字新聞は外国の情報を手に入れるのに重要な情報源だったが、こちらは現在はインターネットの影響で現地の新聞の情報を知ることができ、それが再編を押し進めたといえる。
増える中国語新聞
英字新聞が再編を繰り返し、そのプロセスで少なくなっていく中で、中国語新聞はむしろ増えている。有料で販売されるものもあるものの、多くはフリーペーパーだ。紙面に販売金額が掲載されていても、大久保や池袋などの中国人が多く暮らす地域に行くと、無料でもらえる。 これらの新聞には、広告が多い。広告には主として、携帯電話や不動産、求人、格安航空券などがある。また、入国管理などの関係か、行政書士の広告も多い。 一方で、ふつうの記事も多く掲載されており、一般的なニュースならこれで十分といえるほどである。 韓国語の新聞については、広告メインのフリーペーパーが一部にある。また新大久保の韓国食材店では、韓国から輸入された『東亜日報』や『朝鮮日報』などが発行日の翌日には店頭に並んでいる。 また、日系ブラジル人やペルー人のために、ポルトガル語やスペイン語の有料新聞もあったものの、2010年に休刊になっている。 外国語の新聞の勢いは、その国の日本進出の勢いに相関している。"The Japan Times"にもっとも勢いがあったのは、日本が太平洋戦争に負け、アメリカが進駐してきた時代である。最近では多くの中国人が日本にやってきており、中国人のための新聞が増えている。 世界と日本との関わりの中で、どんな新聞がどのように勢いがあるのかは参考にしてもいいものである。ある国のことを知りたければ、その国の人が多く住んでいるところに行く。そこには新聞があり、そこからその国と日本との関わりを知ることもできるだろう。 (ライター・小林拓矢) (注1)"Asahi Weekly"は学習者向けの英字新聞である。毎日新聞系列の"MAINICHI Weekly"も学習者向けの新聞だ。ちなみに、朝日新聞の英字版はAmazonのKindle Storeで販売されているが、日本のAmazonでは入手できない。