【虎になれ】そんなんおまえ細かいよ 近本光司1番復帰の舞台裏
<阪神7-2ヤクルト>◇19日◇甲子園 「当たり前やんけ!」。試合後、指揮官・岡田彰布に怒られた。何の話か…を今から書く。 【写真】お立ち台で笑顔を見せる近本 この日のオーダーを見て「やっぱり…」と思った。1番に近本光司が復帰したからだ。4月14日の中日戦(バンテリン)で一度試し、今月12日のDeNA戦(横浜)からは本格的に3番打者になっていた。「去年みたいにはいかんよ。ミーティングでもそんな話、しててん」。岡田は“配置換え”について説明した。 それから区切りの1週間。岡田は近本を1番に戻した。結果が出ていないからだ。近本の打順別の数字を少しだけ並べてみる。 1番 打率2割8分4厘 6本塁打 20打点 3番 打率1割6分 本塁打なし 1打点 「3番では思うような感じで打てないのかな」…。こちらがそう感じるのだから、当然、岡田も考えている。この日、試合前に近本と会談。その結果、1番打者に戻したことを試合後に明かした。 「打ってる打者を(3番に)入れて、打てんようになるのもあれやったからな。近本と話して。1番でいこう、戻そかって」 岡田によれば、近本自身は「1番の方が楽に打てます。でもいずれは3番を打ちたい」と言ったそう。いずれにせよ、これが近本が適時打を放つ結果につながったのかもしれない。 思い出すのは96年日本一に輝いたオリックス・ブルーウェーブだ。監督として岡田に影響を与えた仰木彬はチームの打撃不振に悩み、不動の1番だったイチローを後半戦から3番にすえ、リーグ連覇、巨人を倒しての日本一をつかんだ。 イチローは3番でも打ちまくったが、同じなのは監督と選手がしっかり話をして決めた点である。ちなみにイチローの希望も「1番がいい」だった。 これは想像だが、今回、3番にするときはその種の会談はなかったと思う。近本は岡田がもっとも信頼する選手の1人だからだ。だが期待した結果が出ず、初めてそうしたはず。そこが重要なのだ。 そんなこんなも含めて岡田に言ってみた。「なかなか細かいですね」と。それに対する答えが冒頭のものだ。「当たり前やんけ。誰も知らんやろけど」-。 その口ぶり、様子からして、あまり繊細さといったものは感じられないタイプの監督だが、野球に関する限り、そんなことはまったくないのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)