新たな「食業」フードコーディネーター 〝消え物〟じゃない劇中料理が大好評 亡き父が60年代に描いた時代が現実に
【フードコーディネーター・赤堀博美のおいしい秘密】 赤堀博美は1991年、大学院を修了すると「赤堀料理学園」(東京都文京区)の副校長に就任した。母で5代目校長の千恵美は、「フードコーディネータークラス」を新設。 「ポスターの料理の盛り付けがよくないとか、尾頭付きの魚の向きが違うとか、以前から嘆いてて、料理を作るだけじゃダメ、食の演出は必要と意気込んでいました」 同時期、赤堀はフジテレビ系のドラマ「La Cuisine(ラ・キュイジーヌ)」でフードコーディネートを担当。 「1話完結で、『親子丼』『鴨のオレンジソース』など料理をテーマにしたドラマ。途中からメインで担当するようになり、毎日が文化祭の準備のようで楽しかったです」 母と娘は「フードコーディネーター」の育成と、活躍の場の開拓に突き進む。 劇中料理は「消え物」と呼ばれ、かつては「偽物」が当たり前どころか、「食事シーンのあるドラマは三流」と言われたが、昭和バブル期に変化が。美食や食通、カリスマ料理人らがテーマの漫画、アニメ、バラエティー番組が人気を呼び、ドラマ化され始めた。 赤堀は99年の日本テレビ系のドラマ「隣人は秘かに笑う」の料理指導から本格始動。「ドラマの料理は俳優さんが食べてなくなりますが、料理に関わる情報が演技を通じて伝わるように伝授しようと思いました」 故郷、家族など多くの情報が詰まっているから、「〝消え物〟だけど〝消え物〟じゃない」。その思いで作り、監修する。「おいしい料理を食べながら芝居ができる」と大好評となった。 食通や料理人のドラマも「フードファイト」「喰いタン」「バンビ~ノ!」「おせん」(いずれも日本テレビ系)など多数担当してきた。 一方、母の「フードコーディネータークラス」には、調理師、管理栄養士、編集者、フードメーカー社員といった、食にまつわるプロの姿が。狙いは当たった。もはや学園は「花嫁修業」の場ではない。94年に調理師、栄養士、ホテル・レストラン関係者らフードビジネスに関わる専門家と「日本フードコーディネーター協会」を発足。今年3月現在、試験による資格取得者は合計2万8000人超に及ぶ。 亡き父が60年代に描いた「新しい食業人」の活躍する時代が、現実となった。