AIが雇用に及ぼす影響--失業の懸念と新たな機会の創出
PepsiCoの欧州担当シニアバイスプレジデント(SVP)兼最高情報責任者(CIO)のNigel Richardson氏も、AIが労働者の効率と生産性を高めると述べたビジネスリーダーの1人だ。 「生成AIは、人間の仕事を完全に置き換えるのではなく、大幅に補強することになるだろう」とRichardson氏は語る。 「もちろん、仕事の一部の要素はAIに取って代わられるだろう。だが、歴史を振り返ると、破壊的技術が登場したときは通常、なくなる仕事よりも生み出される仕事の方が多いように思う」 Richardson氏は米ZDNETに対し、AIの台頭によって利点を得られるプロフェッショナルは、変化を受け入れる者である可能性が高い、と語った。 「一生学び続けるという心構えが必要だ」とRichardson氏。「私が知る成功している人々は、新しいことの学習に対して常に前向きだ。1つのことを学んだら、それをずっと仕事で使っていけると考えるのは間違っている」 プロフェッショナルはAIに対する感情を不安から自信へと変えていく必要がある、というのがビジネスリーダーたちからの重要なメッセージだ。 インターネット接続プロバイダーExpereoの最高収益責任者(CRO)であるBen Elms氏は米ZDNETに対し、技術革新の導入には必ずと言っていいほど恐怖という副次的要素が伴う、と語った。 「AIに対して、『世界を変えて、人々を失業させるだろう』というアプローチで臨んでいるなら、それは誤りだ。AIはさらなる機会と雇用を創出するだろう」(Elms氏) Elms氏は、適切なユースケースを見つけることが成功の鍵だと述べた。同氏は顧客サービスリクエストの解決に関する自社でのケース例を挙げて、それらのリクエストの多くでは標準的な回答が求められる、と説明した。 「これらは繰り返しが非常に多いタスクだ」と同氏は語る。「こうしたリクエストはテキストベースであり、回答の多くをAIによって迅速かつ効果的に提供できる。その能力によって従業員がサービス業務から解放され、追加のトレーニングを受ければ、第一線の担当者となって顧客体験を改善することができる」 The Home DepotのテクノロジーフェローであるHari Ramamurthy氏も、AIと自動化によって労働者がより興味深い仕事に注力することができると述べたビジネスリーダーの1人だ。 「AIは販売員の生産性を向上させるとともに、彼らが従事する業務の面倒で単調な側面を手助けするものに違いない、とわれわれは考えている」 Ramamurthy氏は先頃、The Home Depotが機械学習を利用する「Sidekick」というアプリを開発して、スタッフの生産性向上に取り組んでいることを筆者に説明した。 コンピュータービジョンも使用するこのアプリは、現場のスタッフが見つけにくい場所にある商品を特定できるように支援する。 「頭上にある一部の商品を探そうとするのは大変だった。商品が思っていたとおりの場所にないこともある」とRamamurthy氏。 「しかし、コンピュータービジョンのようなテクノロジーによって、スタッフがそれらの商品をより簡単に見つけることができる。販売員の生産性を向上させることで能力を高め、顧客により良いサービスを提供できるようにするという点に関して、われわれはこのような考え方を持っている」 Goldman Sachsが先頃発表した調査レポートでは、生成AIを早い段階で導入した企業の生産性が平均で約25%向上したとされている。 こうしたAIによる改善を通じて、一般の人々と接する組織のスタッフは、退屈な反復作業を削減し、人生を変える可能性のある活動に専念できるかもしれない。 37万人以上の子供、若者、保護者、介護者を支援する英国の慈善団体Barnardo'sでプログラムマネージャーを務めるMichelle Smith氏は、AIを賢く使用することで、スタッフが最も重要な第一線のサービスに集中できる可能性があると述べた。 「人間関係がわれわれの原動力だ」と同氏は米ZDNETに語った。「人間関係の中で、人々は仕事から最も大きな喜びを得て、動機付けされる。私たちは目的を持って働いている。画面の前にずっと座っていて、同僚と交流する機会がないと、苦痛を感じる」 Smith氏によると、Barnardo'sは生成AIツールによって事務的な負担を軽減し、スタッフの思考、共同作業、意思決定の時間を増やせる可能性があるという。 「私は長年事務に携わっているが、『書類の確認という退屈な作業をするよりも人と話したい』と思うことがよくある」。同氏はこのように述べた。 「新興技術を活用することで、人々をプロセスから解放し、自らの役割で創造性を発揮できるようになれば、最高だ。今も事務に携わっている同僚たちに、新しいスキルを習得する機会が与えられることを切に望んでいる」 この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。