「無農薬農業と養鶏したい」 鶏連れての移住に対応、東川町の寛容さに驚き
今年の1月、都内で行われたある移住・交流・地域おこしのイベントに行ってきた。およそ300もの地方自治体のブースが並び、わが町の魅力を伝えようと一生懸命PRに力を入れている。 日本全体でも人口減少に転じている中、都市部への人口流出による減少の課題を抱えている自治体が多い。観光で訪れるならまだしも移住となるとそう簡単に決断できることではないだろう。 しかし、その中でも人口減少を食い止め、増加へと転じさせている自治体がある。そんな町の一つ、北海道のほぼ中央に位置する東川町。その理由はなぜ、魅力はいったいどこにあるのだろうか。
養鶏農家の新田美雪さんはご主人とともに稚内から移住してきた。有機栽培を目指すご主人の稲作と稚内にいた時から営んできた養鶏に、東川町の環境はぴったりだった。 移住してきたときも、役場の人たちや近所の農家の人が親身に相談にのってくれたことがありがたかったと言う。家だけ引越してくるならまだしも、無農薬の農業、鶏まで持ち込んでの養鶏をしたいという移住計画にも対応してくれた町の寛容さに驚いたそうだ。 鶏に与えるエサは北海道産のくず米、米ぬか、同じく道産の等級外小麦や酸化防止剤無添加の魚粉などを使用し、平飼いの環境で育てるというこだわりである。稚内で養鶏を営んでいたときからそのこだわりは変わらないのだが、長くお付き合いのあるお客さんから「東川町に来てからのほうが(たまごが)美味しくなった」と言われたそうだ。 「たまごの70パーセントは水分。ほとんど同じような条件で育ててきたから、その差は東川の水しか考えられないですね。」と新田さんは言う。 そんな新田さんが一人で切り盛りするカフェがある。あくまでも農業者としてのスタンスで、収穫に余剰のあったときにこのカフェで料理を提供している。不定休で食材がなくなれば閉店時間前でもお店を閉めてしまうことがある。それでも大人気のとろとろのオムライスを求めて開店前からお客さんが並ぶ。東川町に訪れたら、是非、道の駅でグルメマップを手に入れてお店めぐりをして欲しい。(つづく) (2017年7、8月撮影・文:倉谷清文) ※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<町民の心捉えた写真の町 北海道東川町>倉谷清文第7回」の一部を抜粋しました。