【北陸中日新聞・奥田さん解説】2次避難者の交流を促すために
石川テレビ
今回は北陸中日新聞の奥田哲平さんに、 能登半島地震での2次避難者の交流を促す取り組みと 今後の課題について解説して頂きました。 (奥田) 「1月の能登半島地震から間もなく1年になります。 元々お住まいだった場所から遠方に離れた 2次避難者の孤立を防ごうという取り組みが広がっています」 (稲垣) 「現在どのくらいの被災者が2次避難しているのでしょうか」 (奥田) 「県によりますと、みなし仮設住宅が約3500世帯です。 この多くが2次避難とみられます。 公営住宅が県内500世帯、県外400世帯です」 (稲垣) 「慣れ親しんだ土地から離れるということは、また違った大変さがありますね」 (奥田) 「そうですね。若い人や現役世代は学校や子育て、 仕事に忙しく、適応能力も高そうです。 一方、高齢の方は見知らぬ土地で知り合いがいないので 出歩く機会が減るとか、人と話すことが少なくなったりすると、 体も心も機能低下が心配されます」 (稲垣) 「被災者がどこにお住まいか、 アパートなどに入ってしまうと見えづらいですよね」 (奥田) 「そこで、さまざまな交流事業が広がっています。 東京のNPO法人「クロスフィールズ」が主催し、 金沢市内で開かれた「笑語(わらかた)ひろば」 担当の西川紗祐未さんは次のように話します」 (西川さん) 『能登半島地震を受けて慣れ親しんだ 能登を離れて暮らしている広域避難者が集い、 新しい仲間や知り合いをつくってもらい、 地域の人ともつながって新しいコミュニティーを作ることを 目的にしています』 (稲垣) 「参加した皆さんの表情はいかがでしたか」 (奥田) 「4つのグループに分かれて自己紹介から始まるのですが、 もう最初からお話が止まらないんです。 友人や近所の人と久しぶりに会ったとか、 はじめましての人でも同じ能登出身ですから共通の話題も多い。 もちろん地震の被災状況も話もあります。 それぞれに大変な状況なのですが、とにかく誰かに話したい、 聞いてほしいという気持ちが伝わってきました」 「大根ずしづくり自体はすぐに終わるのですが、 その後も試食しながらお話します。 そこで参加者同士をつないで、話を盛り上げるのが 市民ボランティア『リンクワーカー』です」 「現在6人が登録されているうちの一人、 社会福祉士の山下明子さんは 『人とつながりたい、外に出たいという思いは共通している。 気持ちを受け止め、地域活動に 具体的につなげていくよう心がけている』と話しています」 「活動に参加した人の中では、 市民農園を借りて野菜を作るようになった人や ボランティア団体に参加するようになった人もいます。 それぞれに新たな避難先になじもう、得意なことをしようと取り組んでいます。 西川さんも、この活動がさらに発展していけば、と期待します」 (西川さん) 『情報が届いていない人に来ていただきたいのと、 今後は参加者が主体的に企画を考えていってほしい』 (稲垣) 「笑語ひろば」以外にも、こういう場所はあるのでしょうか。 (奥田) 「金沢市社会福祉協議会は、毎週金土と福祉用具情報プラザで 『あつまらんけのと』というサロンをしています。 現在、各地区の公民館でも同様のサロンが開かれています。 県内のほかの自治体でもそれぞれに2次避難者が集まるイベントや 支援物資の配布などが行われています」 (稲垣) 「県内全体で広域避難者を支えたいですね。 一方、こういう場に来られない皆さんにも情報を届けたいですね」 (奥田) 「はい、クロスフィールズの西川さんが教えてくれたのは、 イギリスで具体的な制度として取り入れられている 『社会的処方』という考えです」 「医薬品などによって人を健康にすることではなく、 人と人のつながり、地域活動などの社会参加の機会を“処方”し、 『孤独・孤立』のような問題を解消し、人を元気にする取り組みです」 「具体的に言えば、 各公民館など地域で開かれているサークル、 教室を紹介するとか、一人ひとりに寄り添って コミュニティーづくりを手伝う『つなぎ役』が求められています」
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