獣を狩るハンターには銃、では化石ハンターに必要なのは? 例えばアンモナイトを掘り出すならピックハンマー1本でOK 発掘の旅に持っていく「七つ道具」とは?
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん 【写真】左から保護材に使う樹脂、瞬間接着剤、ゲンノウ、タガネ、ピックハンマー、新聞紙、ルーペ、フィールドノート
「化石採集には何を持って行けばいいですか」と、よく聞かれます。大自然の中で獣を狩るハンターには、ライフルが必要です。化石ハンターにとって、ライフルに相当する道具がハンマーです。 地層に埋まった化石を見つけたら、硬い岩盤の中から掘り出し、周りの余分な岩を取り除く作業が欠かせません。そんな時に、ハンマーが活躍します。 私は、登山で使われるピッケルのように先がとがった、岩石採集用のピックハンマーを愛用しています。先端を化石に添わせ、てこの原理でえぐれば、50センチ程度のアンモナイトでもハンマー1本で楽々と外すことができるのです。 地層が想定以上に硬い場合には、タガネ(金属や岩石を加工する工具)とゲンノウ(頭の両端が平たい金づち)の出番です。タガネをゲンノウで打ち込み、岩から取り出します。 うまく外せればいいのですが、化石がもろくて壊れそうになることがあります。その際に保護材として使うのが瞬間接着剤や、樹脂を溶剤で溶いたもの。表面のひび割れに塗ると、破損しにくくなります。
そのほか、発掘した時の状況や産地情報をメモするフィールドノート、小さな化石を探す時に便利なルーペ、頭や指先をけがから守るヘルメットや軍手があれば準備万端。おっと、化石を包む新聞紙を忘れてはいけません。 いずれもインターネット通販で買えるものです。野山という広大なフィールドが待ち受けています。ぜひ冒険の旅に出かけましょう。 ※鹿児島県長島町獅子島は事前に発掘許可が必要です。各自治体や土地の持ち主に確認しましょう。 【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。 (連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
南日本新聞 | 鹿児島
【関連記事】
- 2020年11月鹿児島県獅子島。朝、海岸を散策中、足元に丸い塊発見。割ってみると薄い板状の骨の断面…直感的にある生き物が頭に浮かんだ
- 映画「ジュラシック・ワールド」に登場した「海のティラノサウルス」こと「モササウルス」。発見の舞台は大阪府南部、7,000万年前の地層が分布する山中。13年前のことだった
- 鹿児島県長島町獅子島。21年と22年発見のボーンベッド(骨化石の密集層、BB)周辺に黒褐色の恐竜の骨片。岩の塊を切り出すと下から大きな骨の塊が…。3カ所目のBB発見だった。
- 二足歩行、巨大なあごと鋭い歯で君臨、体長10メートルに迫る巨体…ティラノサウルス科の恐竜だって「歯ぎしり」していた? 長さ8センチを超える国内最大級の歯化石に残る跡
- アンモナイト化石の雌雄。見分けるヒントは発見状況、サイズ。「小さい殻に“生”の記憶。何ともいとおしい」。論文を書いた33歳の“風雲児”は思いをはせる