1ドル150円台の米ドル/円…“さらなる円安”のカギを握る「日本株」と「海外投機筋」の注目ポイント【国際金融アナリストが考察】
米国ではインフレ圧力の高まりを受けて米金利が上昇するなか、為替市場では米ドル高・円安が進んでいます。こうしたなか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、「米ドル/円相場は1ドル148円台が下限となり、米ドル上限(円安の限界)を模索していく」といいます。2022年、2023年に続いて「1ドル151円台の円安」は訪れるのか、詳しくみていきましょう。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
2月27日~3月4日の「FX投資戦略」ポイント
〈ポイント〉 ・先週の米ドル/円は小動きに終始。 ・「日本株高=円安」に変化の兆し。日本株投資の為替リスク回避を含めて円売り主導役の1つと見られる海外投機筋が円売りひと段落なら、米ドル高・円安への影響にも注目。 ・今週の米ドル/円は148~151.5円中心で予想。
先週の振り返り…「日本株高=円安」に変化の兆し
先週の米ドル/円は150円台前半の小動きに終始しました。米ドル高値は150.7円、一方安値は149.6円で、最大値幅はほぼ1円程度にとどまりました(図表1参照)。 小動きに終始した要因としては、手掛かり材料が乏しく日米金利差も大きな変化がなかったこと、月曜日が米国、そして金曜日は日本の主要な金融市場が休場で取引参加者が少なかった可能性があること、さらに、日経平均がバブルの高値を更新するなど株式相場に関心が高まるなかで、為替相場への関心が相対的に低下したことなどの影響が考えられます(図表2参照)。 株高との関係でいえば、年明け以降続いてきた「日本株高=円安」の連動に変化が出た点は注目でしょう。 2023年以降、日本株が一段高に向かう局面では、「株高=円安」が連動する傾向が見られました。主には、2023年4~7月と2024年1月以降、2つの局面でした。これは、日本株一段高のリード役のひとつと見られた海外投資家が円安に伴う為替損失を回避するべく日本株買いと円売りを同時に行うことが一因と見られてきました(図表3参照)。
「日本株高=円安」ひと段落後…過去類似局面との違い
ところで、2023年7月には「日本株高=円安」がひと段落したあと、米ドル/円は145円程度から137円台へ急反落に向かいました。これには、海外投資家の円売り一巡の影響があったと考えます。 一方今回は、先週にかけて日本株の一段高が広がるなかで円安はそれに追随せず、両者のかい離が目立ってきたという点が明確に異なっています。これは、円がすでにここ数年の最安値圏まで下落してきたことにより、さすがにさらなる下落余地は限られるとの判断から、海外投資家も為替損失回避の円売りを止めはじめているのではないでしょうか。 そもそもCFTC(米商品先物取引委員会)統計などを見る限り、海外の投機筋の米ドル買い・円売りには「行き過ぎ」懸念が強くなってきました。 2023年7月も、投機筋の円売り超しが12万枚程度で拡大が一巡した後に、上述のように米ドル/円は比較的大きく反落に向かいました。そして先週にかけて、投機筋の円売り超しは再び12万枚以上に拡大しました(図表4参照)。 米ドル買い・円売りの主導役の1つである海外投機筋の米ドル買い・円売りのひと段落が、米ドル高・円安の一巡、そして米ドル安・円高への動きを後押しすることになる可能性には注目です。 上述のように「日本株高=円安」は、最近にかけてかい離が目立ってきましたが、そもそも日本株自体、さすがに短期的な「上がり過ぎ」懸念も強くなってきています。そのようななか、このまま円安を置き去りにした形で日本株高だけが続くことにも自ずと限度があるのではないでしょうか。 日経平均の90日MA(移動平均線)かい離率はプラス10%を大きく上回り、経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いことを示しています(図表5参照)。 日本に限らず、米国も含めて株価が短期的な「上がり過ぎ」の反動により下落に転じ、それが米国などの金利低下を後押しするようなら、日米金利差を通じて「米ドル高・円安」から「米ドル安・円高」に転換する可能性が高まることになるでしょう。