女性を精神的に追い込む「酷すぎる拷問」…イランで彼女たちがここまで虐げられてしまう「原因」
ナルゲス・モハンマディ『白い拷問』
イランの人権活動家であり、人権擁護者センター副代表などを勤め、あらゆる人権侵害や女性問題などを精力的に取り上げ、自由と平等のために戦っているナルゲス・モハンマディ氏。昨年、彼女がノーベル平和賞を受賞したニュースは世界を駆け巡ったので、ご存知の方も多いのではないかと思う。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性 この本は、現在もイラン当局に拘束され刑務所で服役中の彼女が刑務所内で書き続けた手記と、彼女が他の女性政治犯服役囚にインタビューした記録である。 イランで女性たちがヒジャーブ(女性が頭を覆うスカーフ)の強制等に抗議していることは、近年時々報じられている。また、その過程で当局の暴力によって女性が命を落とした事例もあり、これらは国際的にも非難されてきた。とはいえ、報道では実際に女性たちや若者たちが当局に拘禁された時に、どのような扱いをされているのか、何が起きているのかの詳細を知ることはできない。この辺りは、私も常々疑問ではあったのだが、その内幕を彼女自身の身の上に起きたことと、他の女性たちに起きたことのインタビューを通して明らかにしたのが本書である。 本書は、メディアから隠された現実を当事者の声で伝えてくれるとともに、その陰湿で耐え難い実態が詳細に書かれている。 「白い拷問」とは何かの解説はここでは割愛するが、肉体的な拷問とは別に、精神的に人間を追い込む拷問であり、これを行われた人間は、元の健康的な状態に戻り普通に生活するのが困難になるほどのものだ。つまり、人間の精神を破壊してしまうものであり、きわめて非人道的な犯罪であるといえる。 長い拘禁、釈放され、また逮捕されるという繰り返しの中で、それに耐え、当局の圧力にも屈せずに精神を保ち、さらに他の同じように拘束されている女性たちを助け、それぞれの体験をも聞き取り、記録として残す。驚くべきことを成し遂げた彼女は、今でもイランの刑務所に収監されたままだ。その不屈の精神にはまさに驚嘆するしかない。