まるで陸ヨットのフィアットが約810万円で落札!「850スピアジェッタ」は豪華なビーチサイドのクルーザーでした
800万円超えの落札価格には、地の利が生かされていた?
ストゥーディオ・ミケロッティ製のフィアット「850スピアジェッタ」は、この種のビーチカーの元祖である「ギア・ジョリー」の発案者たるオナシスの配偶者、ジャクリーン・ケネディ・オナシス夫人や、ヘリコプターや高性能モーターサイクルで有名な、イタリアのアグスタ一族に代表されるセレブリティたちのために、わずか80台しか製造されなかったとされており、ほかのビーチカーたちと同様、海辺のヴィラ周辺でのアシ車として供用されたり、ヨットのテンダー(補給船)として使われたりすることが多かったという。 このほど「MIAMI 2024」オークションに出品された850スピアジェッタは、このモデルのデザイナーとして関与したフィリップ・シェルの友人といわれているロイス・フィリップス・ポスターに、新車として引き渡されたもの。そののち21世紀初頭まで、彼女の所有車両であったといわれている。 その後の経緯はオークション公式ウェブカタログにも記されていないが、2012年にニューハンプシャーの納屋で発見されたことは判明しているそうだ。 この「バーンファインド」のあと、魅力的なオリジナルの籐シートはそのままに、天板はオリジナルのデザインを維持してリニューアルされた。さらにそののち、スピアジェッタは2年前に今回のオークション出品者でもある現オーナーによって引き取られ、それ以来、彼らの空調管理されたコレクションルームで大切に保管されていると伝えられる。 公式カタログのキャッチコピーでは「良好なランニングコンディションで提供されるこの“陸上のヨット”は、マイアミでもそのほかの土地でも、ビーチサイドのクルーザーとして最適」と謳われたフィアット850スピアジェッタには、現オーナーとの協議の結果、5万ドル~6万ドルというエスティメート(推定落札価格)が設定された。 そして迎えた競売ではビッド(入札)も充分に伸びたようで、終わってみれば5万3200ドル、現在の為替レートで日本円に換算すると約810万円という、なかなかの高値で落札されることになったのだ。 この、売り手にとっても買い手にとっても悪くないかと思われるハンマープライスに、ビーチカーとの生活が想像しやすいマイアミというロケーションの利が作用したことは、きっと想像に難くないだろう。
武田公実