【愛媛スタバ銃撃】捜査関係者が「異例の時期だ」と訝しむワケと昼間のカフェが狙われた“驚きの理由”
多くの買い物客でにぎわう日曜日の夕刻、愛媛県四国中央市のショッピングモール内の喫茶店で、まったく不似合いな銃声が鳴り響いた。店内は、人々がコーヒーの味と香りを楽しみつつ安心して談笑する場だったはずが、銃撃による硝煙の臭いが漂うなか、胸から出血した男性が殺害される事態となった。間もなく警察官が駆け付け店内は騒然となった。 【画像】すごい…! 六代目山口組・司忍組長 幹部の出迎えに「ド派手私服&サングラス」で登場…! 事件が起きたのは、正月のお屠蘇気分が抜けて通常の社会活動が再開してしばらく経過した1月14日だった。この日の午後4時ごろ、「スターバックスコーヒーイオンタウン川之江店」の店内で、数発の銃弾を浴びて死亡したのは職業不詳・石川雄一郎で、警察官が駆け付けた際にはすでに意識はなかった。ほかの一般客にけがはなかった。 愛媛県警は近くの防犯カメラに残された画像から、男性を射殺した男は指定暴力団池田組のナンバー2である若頭、前谷祐一郎と判明、殺人容疑で逮捕状を取って指名手配した。殺害された男性はかつて池田組に所属していたが、数年前に6代目山口組に移籍していた。警察当局も移籍を追認する形で、1年前となる’23年1月に移籍を認定していた。 六代目山口組は神戸山口組との間で対立抗争状態が続いている。池田組はその神戸山口組から離脱して独立した組織で、本部は岡山市にあり豊富な資金力で知られている。神戸山口組とは別に、池田組も六代目山口組との間で対立抗争状態にあるとして、双方は暴力団対策法に基づき特定抗争指定暴力団に指定され、活動が厳しく規制されているのが現状だ。 警察当局の幹部は、「事件は抗争が原因なのか、それとも個人的な怨恨などが動機なのかは現在のところは不明だ。しかし、不特定多数の一般市民がくつろいでいる喫茶店で拳銃を使うとは、周囲に危害が及ぶ可能性が高く危険極まりない。許しがたいことだ」と非難する。 こうした警察当局の見解に対して、指定暴力団幹部は、「喫茶店で、道具(拳銃)で弾くことはよくあるとまでは言わないが、たまにはある」と明かしたうえで、次のように解説する。 「他組織との間でトラブルの解決に向けた話し合いで、喫茶店を使うことはよくある。これは一般のカタギの人たちが商談や打ち合わせだけでなく、休憩などで喫茶店を使うのと同じ。トラブルについての話し合いが行われることになっても喫茶店には多くの一般客がいるため、呼び出された方は、『ここで撃たれることはないだろう』と気が緩む。そこが狙い目で、道具で弾いてしまうということだ」 暴力団が対立状態もしくはトラブルを抱えている相手に対して、喫茶店内で銃撃する事件は最近も発生している。’23年5月、東京都町田市の喫茶店で六代目山口組系の幹部が射殺され、出頭してきた稲川会系の元幹部が逮捕された。この事件が発生したのは、「ドトールコーヒーショップ町田ターミナル店」だった。六代目山口組系の幹部は1発、撃たれた際に店外に逃げたが、追いかけられて再び撃たれたという。店は町田駅に隣接する多くの通行人が行きかうビル内にあったが、ドトールの店内外の一般客にけがはなかった。 喫茶店内で暴力団組員が拳銃を発砲し、重大な被害が出たとして知られているのは、’97年8月に五代目山口組当時の若頭・宅見勝が射殺された事件だ。神戸市のホテル内の喫茶店でほかの最高幹部と談笑していた宅見は、同じ五代目山口組中野会のヒットマンによって銃撃されて死亡。宅見の近くの席にいた歯科医にも流れ弾が命中し死亡するといった理不尽な被害が発生し、暴力団を非難する世論が巻き起こった。 このほか、’02年9月には東京の新宿・歌舞伎町の喫茶店「パリジェンヌ」で、住吉会系幹部がチャイニーズマフィアに射殺された事件も発生している。双方のトラブル解決のために店内で話し合いが持たれていたが、銃撃事件となり住吉会系幹部は数発撃たれて死亡。店内の一般客にけがはなかった。今回の事件について、「許しがたいことだ」と強調していた前出の警察当局の幹部がさらに批判する。 「今年は元旦に能登半島で巨大な地震が発生し多くの住民が被災した。このような災害時にはヤクザは通常はおとなしくしているものだ。売名目的もあるが、かつて、阪神淡路大震災が発生した際、山口組は神戸で炊き出しなどをしていた。東日本大震災でも多くのヤクザが被災地に物資を届けていた。今回はおとなしくしているどころか、不特定多数の人がいる喫茶店で事件を起こした。あってはならない」 暴力団は災害時だけでなく、国家的な行事が行われている際には活動を自粛することがあるという。近年では’21年夏のオリンピック・パラリンピック、’23年5月の広島サミットなどの際に、六代目山口組は傘下組織の組員たちに対して、「問題を起こさないように」との通達を出していた。活動自粛は警察の大規模警備が行われている間は、社会に迷惑を掛けない、そして何より警察を怒らせないためとされている。 今回の事件をこの時期に実行しなければならなかった理由は、前谷が逃走中のために不明だ。だが、何より前谷は拳銃を所持したまま逃走しているため、再び不特定多数の人々がいる場での発砲事件が発生しないとの保証はない。地域住民の不安解消のためにも、警察の迅速な捜査が求められている。(文中敬称略) 取材・文:尾島正洋
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