60歳「同じ年収」「同期入社」の親友2人、生涯賃金「2,000万円」の差がついた、ワケ【元参議院産業医が解説】
ヘルスリテラシーによって生涯賃金に差がつくワケ
ここで60歳の定年退職を迎えるまで、同じ会社に勤め、これまでずっと同じ年収をもらってきたとある同期入社の会社員2人のパターンを比較して考えてみましょう。 (計算しやすくするために数字や勤務条件を単純化している点はご了承ください) (例1)会社員Aさん 会社員のAさんは、若手のころから健康意識が高く、60歳になった現在もこれまでどおり元気に働ける健康な状態です。そんななか勤務先から、「60代前半は週5日勤務、60代後半は週3~4日の勤務、平均年収は300万円とし、70歳まで雇用の延長可」との勤務条件を提示されました。 仮に、この条件で10年間働いたら、生涯賃金は、60歳以降は働かない場合と比べて3,000万円アップします。「60歳の定年退職後いきなり無職」を選択しなかったことで、「老後2,000万円問題」はクリアすることができたといえます。 1週間の所定労働時間が20時間以上の場合は社会保険にも加入できます(※1)ので、賃金以外のメリットも継続して享受できます。 (※1)企業の従業員数が101人以上の場合、2022年10月現在 では、別のパターンを考えてみましょう。 (例2)会社員Bさん Aさんと同期入社し学年も同じ、親友の会社員のBさんは、若いころから健康維持に無頓着で、喫煙者です。 60歳になった現在、Bさんの健康状態は、現役時代に大病を患った影響で「週3日程度の勤務であれば何とか可能」という状況でした。Bさんの場合、今後Aさんのように毎日就労することは難しいでしょう。会社としても、安定した勤怠や気力の面で懸念が残るBさんに、60歳以降もこれまで通りの条件で働いてもらうことには、躊躇せざるを得ません。 Bさんは勤務先から「週2~3日で計16時間勤務、時給1,300円」という勤務条件を提示されました。 年収に計算すると約100万円弱です。仮に10年間この条件で働き続けたとしたら約1,000万円ですので、Aさんとは2,000万円もの生涯賃金の差が生じることになります。Bさんは勤務時間が少ないため、社会保険の加入も困難でしょう。 そもそも、Bさんの健康状態がさらに悪化して働けなくなってしまった場合、収入はゼロとなるので家計にはかなりの打撃となります。 いかがでしょうか。マネーリテラシーを高めて資産を増やすことも大事ですが、生涯賃金の尺度で考えることも大切です。生涯賃金を増やすためには、「身体が資本」といわれるように、心身ともに健康であることが大前提です。 老後の資金を懸命に貯めることも大事ですが、60代以降でも稼げる心身状態を保つことも、お金と同じように大切なのではないでしょうか。
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