「著名人の詐欺広告」で問われる“無料ネット社会”の是非 生成AIが生み出すコンテンツは著作権違反か
また、スポーツ紙や芸能誌のデジタル版がさかんに送り出すコタツ記事。あれはMFAとどこに違いがあるだろう。コンテンツを人間が書いているか、AIが生み出したかの違いがあるだけで、広告収入を得るために記事を載せるのだから変わらないと言っていい。そのうち、テレビの前に置いたスマホで番組を録音し、あとは自動的に炎上しそうなコメント部分を抜き出して適当な写真を添えて自動的に記事を公開する仕組みでコタツ記事の量産を始めるスポーツ紙も出てくるかもしれない。理論上は十分可能だ。
MFAは無料広告モデルの行き着くところをあらわに示してしまったのかもしれない。コンテンツなんて人間が作らなくてもメディアは成り立つと。生成AIの登場がその流れを決定づけた。オッペンハイマーが原子爆弾を開発したら世界のありようがすっかり変わったように、生成AIがネットの様相を変えようとしているのだ。 ■無料世界と有料世界の境界 くしくも無料サービスで成長した2大巨頭SNSが有料に足を踏み入れているように、これから先のネット世界は有料か無料かで2つに分かれると私は予想する。
一方は無料の世界。その代わり、AIが作成したのか人間によるものかわからないコンテンツがメディア上に無秩序に出没し、周りを広告が埋め尽くしている。ユーザーは正しい情報を得る意欲もなく、ただ暇つぶしになるとそうした怪しいコンテンツを消費する。実態があるのかないのかはっきりしない広告主が勝手に著名人の写真を使った広告で人々を誘う。中には出し先を吟味せず広告出稿したまっとうな企業の広告も表示されるが、広告主として確認もしていない。
もう一方は有料の世界。きちんと情報が整理され、どこへ行けばどんなコンテンツを利用できるか、みんながわかっている。コンテンツを読んだり楽しんだりする場合は正当な対価を支払う。多くの人は、自分が日常的に読んだり見たりするメディアを決めていて、サブスク契約をしている。もちろんたまに単品のコンテンツも購入する。広告はそうしたメディアの中で、読み応えや見応えのあるコンテンツとして機能している。もちろん広告とわかる表示がついている。広告主もユーザーも安心して広告に接することができる。