欧州は米国を安全保障でもはや頼れず、独自の防衛強化を-仏大統領
(ブルームバーグ): 米国の安全保障の傘は過去の物で、欧州が生き残りたいのであれば信頼できる独自の防衛戦略を構築する必要があると、フランスのマクロン大統領が呼び掛けた。
マクロン氏は25日、欧州議会選挙を6週間後に控えて自身が描く欧州の将来像について演説し、現在の地政学的な状況を踏まえると十分な自衛には、独自のミサイル迎撃システムや長距離ミサイルを欧州は生産する必要があるのかもしれないと語った。
ロシアのプーチン大統領が始めた戦争が欧州連合(EU)内に波及する恐れや、11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が返り咲く可能性が懸念されているにもかかわらず、EUは防衛産業の強化が進んでいない。トランプ氏は今年に入り、欧州諸国が国防に十分な支出をしない場合、米国は助けにはやって来ないと示唆した。
マクロン氏はパリのソルボンヌ大学で、米国について「われわれの同盟関係がいかに強くとも、今後何年、何十年と欧州が地政学的な優先事項になることはない」との認識を表明。「欧州は自らにとって重要なものを同盟国と、あるいは単独ででも守らなければならない」と主張した。
ロシアは戦場での成功で勢いづき、米国のウクライナ支援は政治的対立の中で不確実さを増した。欧州諸国は、米国が欧州への支援を縮小したらどうなるのか、ウクライナの財政的・軍事的ニーズをどのように補えるのかを巡り、懸念を強めている。
「世界全体で再軍備が加速している状況であるのに、欧州全体として認識がまだ遅過ぎ、弱過ぎる」とマクロン氏は述べ、「ロシアやイランなど、能力の増強を続けている抑制の利かない地域大国がある。欧州は包囲されている」と続けた。
さらに、「欧州がロシアからエネルギーや肥料を買い、中国で生産をし、安全保障を米国に任せていた時代は終わった。ゲームのルールは変わったのだ」とも語った。
原題:Macron Says Europe Can No Longer Rely on US for Its Security (1)(抜粋)
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Ania Nussbaum