「取材をすればするほど赤字になる」“泡沫候補者”を取材しつづけ25年。自称“選挙ジャンキーライター”が廃業宣言!?<映画『NO選挙,NO LIFE』秘話>
畠山理仁×前田亜紀#1
選挙のたびに世間やマスメディアから「変人」と軽んじられてきたきらいのある“泡沫立候補者”たち。そんな彼らを、25年間ひたすら取材しつづけてきたライターを追ったドキュメンタリー『NO選挙,NO LIFE』が話題を呼んでいる。「コスパ、タイパ無視」のフリーライターにして本作の「主人公」畠山理仁を、延べ300時間にわたりカメラを向けつづけた前田亜紀監督がインタビューした。 【画像】話題をさらった「ごぼうの党」演説風景
総収録300時間!? 映画製作秘話
前田亜紀(以下、前田) 全候補を取材するという畠山さんの肩越しに、目の前で起きていることを撮る。選挙期間中、日々あれはこうだったねという話をして一日が終わる。その繰り返しで、畠山さん自身のことはほぼ何も聞かずに終わってたんですよね。 畠山理仁(以下、畠山) そういえば僕も前田監督のことで知っているのは、大分県出身ということと、教員養成の大学に入ったのに教員免許をとらなかったということぐらいですね。 前田 今日はこの機会にいろいろ聞かせてもらおうと、映画のスクリプトを見返していたんですね。 畠山 撮影したものの文字起こしですか? 前田 編集のときにこれがあると便利なんですよね(ノートを見せる)。 畠山 これ全部自分で起こされたんですか? 何かのソフトを使ったりせず。 前田 画だけの場面もありますから。 畠山 すごい時間撮っていたでしょう? 前田 300時間ぐらい。でも編集の宮島亜紀さんに頼むのに、低く見積もって申告したこともあって、正確に数えてないです。 畠山 かなりコスパ無視ですよね。 前田 ええ(笑)。それで映画の本編に収録しなかった箇所も含めてきかせてください。参院選の二日目に「ごぼうの党」の取材に行きましたよね。 畠山 ありましたねえ。ゲストにボブ・サップとピーター・アーツを呼んで、天狗のお面を被った人が現れたんですよね。 前田 そのとき「比例」で出るにはお金がかかるという話になり、「これは1億くらいかかっていそうだ」と畠山さんがおっしゃって。「1億あったら何に使いますか?」という話になったんですよね。 畠山 しましたねえ(笑)。 前田 「畠山さんは1億円あれば政党をつくりますか?」と聞いたら、「僕は、好きに選挙を見て回るかなあ」「だったら、いまやっているでしょう」というやりとりをして。 畠山 そうでした。でも、1億円あったら取材費の心配をしなくてすみます。 前田 ヘリで行ったり。 畠山 いや。ヘリは一瞬でお金がなくなるので、節約をしてたくさん回りたい。でも、そういう話をしたこと自体をすっかり忘れていました。 前田 しばらくどこに行っても、「1億あったら」という話をしていましたよ。 畠山 そういう質問がはじめてだったので、ずっと頭の中で考えていたんでしょうねえ。1億、1億と。