木村多江さん、ブルーの着物「手仕事の尊さを感じる」加賀友禅や藍染めの長板中形の繊細な美
現代の染織家が手掛けた個性あふれる新作を、木村多江さんにお召しいただきました。素敵な着こなしをご覧ください。 きむら・たえ●学生時代から舞台活動を始め1996年ドラマデビュー。以降、ドラマ・映画・舞台と幅広く活躍。2024年3月1日公開の日英合作映画「コットンテール」、3月8日公開の映画「マイホームヒーロー」に出演。NHKEテレ「木村多江の、いまさらですが…」ではMCを務める。
松原伸生作 長板中形「四弁花文」
両面に糊を置き、藍染めする長板中形。松原伸生さんはこのたび重要無形文化財「長板中形」保持者に認定されました。この作品は繊細な線でどこまでもつながる四弁の花を木綿地に染めています。縞に浮き織を配したなごや帯を合わせました。 着物制作/松原伸生 帯/染と織たかはし 制作/村江菊絵 帯〆/龍工房 帯あげ/さんび[荒川]
松原伸生さんより
作品名は四弁の花の意でもあり、仏語の「四無碍弁(しむげべん)」(仏が自在に教えを理解し語る完全な能力)の略でもあります。柄のもつ意味や、染め上がりの線の繊細さが長板中形らしいと感じてこの模様を選びました。白場が多いため、染めるときに最も留意したのが糊の質や重さです。 <写真>生地アップ
松島由美作 加賀友禅訪問着「超然」
女性で初めて「加賀友禅技術保存会」会員に選出された松島由美さん。デザイン化した菩提樹の枝葉を全体に流れるように描いた訪問着は、銀通し地に鮮やかな色使いで、遠目にも際立つ作品です。唐草模様の袋帯を合わせました。 着物制作/松島由美 帯/髙島織物 帯〆/龍工房 帯あげ/みふじ[加藤萬] リング、バッグ2点とも/和光 ぞうり/伊と忠
松島由美さんより
「超然」という言葉が意味する、周りの動静にとらわれず主張や行動を貫く姿勢はもの作りに不可欠な要素だと考え、その思いを表現するために精神性を感じさせる菩提樹をモチーフに選びました。技法は加賀友禅で用いるものですが、リズム感を意識してデザインし、鮮やかなブルーを基調に彩色しています。 <写真>生地アップ
木村多江さんより
今日の着物は、個性が際立つ作品で、どこに着ていこうかとわくわくする思いで着させていただきました。作家の方々が伝統と革新の両立に取り組んでいらっしゃることが伝わってきます。私もNHK BS「美の壺」のナレーションのお仕事を通じて、手仕事の尊さを感じ、伝統産業の継承のためにお役に立てたらと考えるようになりました。 撮影=中村和孝[人物] 桂太(フレイム)[静物] ヘア&メイク=佐々木博美 着付け=石山美津江 撮影協力=ホテル ザ セレスティン東京芝 『美しいキモノ』2023年冬号より