<カープ若手育成論>「時代の変化に合わせながら、伝統も重んじる」高二軍監督が語る“令和カープ”の育成方針
2016~2018年のリーグ3連覇時には一軍ヘッドコーチとしてチームの勝利に貢献した高信二氏。2021年からは二軍監督として若鯉の指導に尽力する。指導者歴26年目の高二軍監督の育成論に迫る。(全2回・第1回) 【写真】大野寮の寮長を務めるレジェンド捕手・道原裕幸さん ◆二軍監督としての方針は、全力疾走・ストライク先行 現在、二軍監督として選手育成に携わっていますが、指導方法も昔と変化しています。今は押さえつけず、まずは選手の思い通りに最初からやらせてみて、そこから悪い癖があれば指導しています。特に新人選手に関してはそういう方針です。自分で言うのも何ですが、昔は私も厳しかった方なので(苦笑)、なるべく選手が萎縮しないように、私自身が意識するようにしています。時代は変わり社会も変わっていますから。二軍は教育の現場ですから、そういう面を意識しています。選手たちへの声がけも萎縮しないように意識はしていますが『締めるところは締める』も大事にしています。これがカープの良いところだと思います。 私の基本方針は、野手は『全力疾走』、投手は『逃げないでストライク先行で攻める』この2点です。 技術的な部分についてはコーチ陣に任せています。二軍監督としては通算5年目となりますが、この方針に変わりはありません。カープの良いところは、常に全力プレーをすること。たとえば走塁時のスライディングにしても手を抜かない、一塁まで全力疾走など、そういったプレーにおける基本的なところは見逃さず、厳しく指導しています。 そして、二軍監督としての大きな役目としては2つあります。 1つは一軍との連携。『今一軍でどういうところが足りないのか』、『誰かの調子が悪くなれば代わりにこの選手を一軍へ』など、密に藤井彰人一軍ヘッドコーチと連携を取りながら、その準備を怠らないようにしています。そしてもう1つは、次代を担う若手選手を鍛え上げること。この2点が二軍監督として意識するところです。 過去に多くの若手を見てきましたが、活躍する選手に必要な要素の1つが『野球センス』があることです。そしてさらに大事になってくるのが、体が強いこと。体が丈夫で故障しない選手は、練習量をこなすことができ、その分伸び率も変わってきます。その代表的な選手が、現在の新井貴浩監督です。私がコーチ就任1年目の1999年に新井監督は入団してきました。 当時、正直言うと技術はそんなにあるわけではなく、打球を遠くに飛ばす力があるなという選手でした。ですが、体の強さ、練習量をこなす体力、何を言われても向かってくる精神力はすごかったです。私も若かったので相当ノックを打ちました。新井監督の著書には『高コーチのノックはかなりきつかった』と書かれていましたね(笑)。失礼ながら、2000安打打つ選手になるとは……。 もう一人は鈴木誠也です。彼は暇があれば、大野寮の中でバットをもってウロウロと歩き、スイングをしていました。やはり、体が強くて鍛えられる選手と、これ以上練習をすると故障する選手では、成長スピードが変わってくると実感しています。 (後編へ続く)
広島アスリートマガジン編集部