日曜劇場『アンチヒーロー』は本当に“問題作”なのか…考察を促すためにTBSが用意する「謎」
ドラマにとって第1話は極めて重要
14日21時、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)の第1話が放送される。 同作は「殺人犯を無罪にする弁護士」が主人公の正義と悪の本質を問いかける物語であり、主演・長谷川博己を筆頭に46人に及ぶ豪華キャストが発表されている一方、役名やストーリーなどの詳細は一切明かされていない。長谷川は番宣出演やイベントなどの場でも「しゃべれないんです」とコメントするなど、「事前情報をほぼ公開しない」という異例のPR戦略を採用している。 【一覧】テレビ局「本当は使いたくないタレント」…ワースト1位は意外な大御所…! 「最初を見てもらえなければ2か月ずっと見てもらえない可能性が高い」という意味で連ドラにとって第1話は極めて重要なだけに、「できる限り情報公開して引きつける」のがセオリー。もし情報公開を避けたことで第1話を見てもらえなかったら、スタッフの責任問題になりかねない危うさがある。 しかし、このPR戦略は昨夏に同じ日曜劇場の『VIVANT』が採用したものであり、同作は昨年最大のヒット作となった。ちなみに『VIVANT』は「赤字で失敗」などの記事が報じられたが、これは一部を切り取った“アンチ”記事。「赤字」は海外配信の成功を目指して制作費を投入しすぎたことが原因と言われており、国内の放送・配信・反響では間違いなく成功と評価されている。 あらためて『アンチヒーロー』は、なぜ情報公開を避けたのか。どんな見どころがあり、成否を分けそうなポイントはどこなのか。さらに『VIVANT』放送当時のような独走を阻止したい他局はどんな対抗策を打ったのか。これらを掘り下げていくと、それぞれの勝算とリスクが見えてくる。
いかに初見のインパクトを高めるか
まず『アンチヒーロー』は、なぜ情報公開を避けたのか。 「事前情報を避ける」というPR戦略の主な狙いは、放送中に爆発的な反響を集めること。事前情報がない分、見ている人の集中力は増し、「どんなドラマなのか」「どんな人物なのか」「どんな過去や関係性があるのか」などの理解が進んでいく。しかも答え合わせを求めるようにSNSにつぶやく人が多くなり、Xのトレンドランキングに入る可能性も上がりやすい。その意味で『アンチヒーロー』は、第1話の放送中から放送後にかけて「正義と悪」のちょっとした論争が起きるかもしれない。 逆説的に言えば、ネット上の反響をより大きくしたいのなら、「こんなドラマではないか」という先入観を与えないほうがいいということ。実際、多くの情報公開によって先入観を与えた結果、第1話の放送前に「これはわざわざ見なくてもいいドラマ」と判断されてしまった作品は少なくない。 その点、『アンチヒーロー』は、制作発表の場で長谷川が「かなり斬り込んだ内容のドラマ」「日本のテレビドラマでここまでやっていいのか、というぐらいの問題作」などと語っていた。初見のインパクトを高めるために、「よくあるダークヒーローもの」とみなされることを避けたようにも見える。 「殺人犯を無罪にする弁護士」という設定のみを前面に出して強調し、さらに主演が「かなり斬り込んだ」「問題作」とコメントしたのは、いかに他作とは一線を画したドラマなのかを訴えたいからだろう。