「あの頃、僕は田家秀樹になりたかったんだ」作家・重松清が大きな影響を受けた音楽ライターと17年ぶりに語ったこと
ライター気質のふたりの対談はダチョウ倶楽部に!?
重松 まずは、田家秀樹さんてどんな人? ということで、田家さんは音楽評論家で、ノンフィクション作家で、ラジオの構成作家で、ラジオのMCで、と、肩書きいっぱいあるじゃないですか。ご自身では、いちばんしっくりくるのは何になるんですか? 田家 最近はありがたいことに、音楽評論家って言ってくださる方が多いので、それでいいや、と思っているんですけど、10年ぐらい前までは、なんでもいいですよ、って言っていたんです。 あなたの見た通りに付けてください。音楽ライターだと思ったら、音楽ライターでしょうし、ただのフーテンと思ったらフーテンでしょうし、もうなんでもいいですって。 重松 それ、みんな困るんですよ(笑)。でもブログなんかでは、ご自身のことを「音楽ライター」っておっしゃってることが多いですよ。自分で「評論家」というのは抵抗がある? 田家 自分から言うのは恥ずかしいというか、僕よりもっと音楽に詳しい方とか、実際にご自分で音楽をおやりになってる方もたくさんいらっしゃるから。僕、何もできないんですよ。 重松 フフフ。 田家 楽譜も読めないし、歌もやってないし、楽器なんてフォークギターでコード5つ知っているぐらい。おこがましくて評論家って言えないなっていうのはありますね。音楽ライターの方が身軽な感じがあります。 重松さんは「小説家になる」とお決めになった時がきっとありますよね。 重松 僕は、いわゆる新人賞に応募してないんですよ。ずっとフリーライターをやってて、「小説書きませんか」って言われて書いたら、なんだかんだと小説の仕事が増えた。 だけど、今でも僕は、根っことしてはフリーライターでありたいなと思ってるし、フリーライター的な仕事がすごく好きです。まあ作家なんてね、国家試験があるわけでもないし、僕は文芸家協会とかペンクラブとかにも入ってないので、まったくのフリーランス。よく言えば、とことんマイウェイでやっていけてるんです。 小説をたくさん書いているライターでありたい、っていうのは、すごくありますね。だから自分の話をするよりも、こうやって田家さんの話を聞く方が好きなんです。 田家 僕も自分のことを話すよりも、人の話を聞く方が好きなんですよ。 重松 だから今日はおそらく、僕が田家さんに「田家さんはこうですか」って質問したら、「重松さんはどうなの」「いや田家さんでしょ」って、ダチョウ倶楽部みたいになっちゃう(笑)。 田家 すぐ返しちゃってね。 重松 話が進まなくなっちゃうから、今日は僕が質問します! 田家 はい、なんでも聞いてください。