<ネタバレあり>「極悪女王」放送禁止級の80年代女子プロレス再現シーン 40代放送記者がガチでびびった!
今風に言えば「不適切」、いや「放送禁止」レベルのドラマかも――。Netflixで独占配信中の「極悪女王」(全5話)のことだ。1980年代、ブームに沸く女子プロレス界の〝最恐ヒール〟として君臨したダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)が主人公の物語。そのリングでの極悪ぶりも、作中でリアルに再現する……のだが、その再現具合がとんでもない。ダンプは88年に引退。現役時代の記憶はほとんどない40代の記者が、今作を通じて知ったダンプの「真実」を紹介する(以下、本編の内容に触れています)。 【写真】コーナーで極悪同盟のダンプ松本(右)に痛めつけられるクラッシュギャルズの長与千種=1985年3月、滝雄一撮影
ダンプ松本の成功物語にとどまらず
「極悪女王」のあらすじはこうだ。主人公の松本香(かおる)は内職で家計を支える母親(仙道敦子)、妹(西本まりん)と、貧しいながらも明るく暮らしていた。ただ、別居する父親(野中隆光)が時折戻ってきて、金の無心をするたび、家の中は修羅場と化す。香はある日、ふとしたきっかけで「全日女子プロレス」(全女)の練習場に足を踏み入れる。歌手としても人気だった「ビューティ・ペア」の1人、ジャッキー佐藤(鴨志田媛夢)の姿に魅せられ、全女のオーディションを受け、入門を許される。同期の長与千種(唐田えりか)、北村智子(のちのライオネス飛鳥、剛力彩芽)らの人気がぐんぐん上昇し、くすぶる思いを抱える中、香は会社から悪役への転向を命じられる。香は「ダンプ松本」と改名し……。 こう書くと今作は、どん底の環境から人気者の階段を駆け上がるダンプ松本の「サクセスストーリー」に見えそうだ。もちろん、そういった要素は多々盛り込まれていて、特に第1話では主人公の生い立ちの描写にある程度の時間が割かれている。「あれ、主人公の試合はやらないの?」と、もしかするとちょっと退屈に感じる視聴者もいるかもしれない。ただ、そんな思いは2話の後半で見事に覆される。
長与千種=唐田えりかvs剛力彩芽=ライオネス飛鳥
もっとも、リングで戦うのはダンプではなく、長与千種とライオネス飛鳥。この時点で、松本香は「ダンプ松本」に改名する前だ。「極悪女王」の世界では、興行面で盛り上がるなどの理由であらかじめ勝敗が決められ、試合もその通りに進む例がよくある(現実の世界とどれだけリンクしているのかは知らない)。しかし長与と飛鳥は、第三者の意向が介在しない「真剣勝負」に臨むことに。試合開始を告げるゴングが鳴ってから、試合のシーンに約10分が費やされる。 飛鳥が「ほら、来いよ、てめえ!」と挑発し、2人の張り手の応酬が始まる。リングの場外に戦いの場は移り、長与は飛鳥の頭をつかんでテーブルにたたきつける。リングに戻った飛鳥は、長与に四の字固めをお見舞いして……。実況のアナウンサーは「格闘技と言うよりもケンカの様相になってまいりました!」とあぜんとする。他の映像作品で、こんな「演技」はほとんどしないはずだが、唐田や剛力の「俳優魂」を感じる一戦だった。