正社員で勤続15年ですが、年収は「350万円」です。これって普通ですか?派遣社員になった方がいいでしょうか?
正社員で勤続15年なのに年収が350万円などと、自分の収入について悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。年収アップの選択肢として、会社員から派遣社員になることを検討している人もいることでしょう。 給与所得者の平均給与を見ると、勤続年数15年で年収350万円は決して高くはありません。しかし、派遣社員も職種によって平均給与が異なり、必ずしも年収面で満足できるわけではないのです。 本記事では、給与所得者と派遣社員の平均給与と、勤続年数15年で年収350万円は少ないのかについて解説します。
給与所得者の平均給与は457万6000円
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者1人当たりの平均給与は、457万6000円です。男女別の平均給与は、男性が563万3000円、女性が313万7000円となっており、前年度と比べて伸び率は上昇(合計:2.7%、男性:2.5%、女性:3.9%)しています。 ■勤続年数15年で年収350万円は少ないのか? 国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、勤続年数15~19年の平均給与は528万円とのことです。男女別で見ると、男性は632万円、女性は363万円となっており、勤続15年で年収が350万円ならば、男女ともに平均を下回ることになります。 なお、勤続年数別の平均給与は表1のとおりで、350万円ですと、勤続年数1~4年の平均給与(計)、女性ですと、勤続年数10~14年、または15~19年と同水準です。男性ですと、勤続年数1~4年の平均給与よりも低い水準となっています。 【表1】
※国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」をもとに筆者作成
派遣社員の平均給与はどのくらい?
正社員で勤続年数15年、給与が安いから派遣社員になるという決断は、すぐにはしないでください。「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によると派遣社員の平均給与は、1日当たり1万5698円(8時間換算)です。これを月で計算すると32万9658円(1ヶ月の勤務日数が21日だった場合)となり、年収395万5896円となります。 派遣社員の平均年収だけを見ると350万円を上回っていますが、これらは全業種を通しての平均です。また派遣社員は、時間給に交通費が含まれていることから、高めに給与が支払われています。会社員と比較すると、原則として賞与の支給がなく、退職金制度もありません。派遣会社の福利厚生を利用するにしても、会社員ほど手厚くないことも想定できるでしょう。 勤続年数に対する年収がどれくらいかも重要ですが、退職金制度や福利厚生の内容なども確認して、自分に有利な働き方を検討することが大切です。 ■職種によってもらえる給与の金額に差が出る 派遣社員の平均の年収395万5896円は、あくまでも派遣労働者全体の平均であって、職種によって大きな違いがあります。現在よりも年収が高いからといって、派遣社員として働いても、思うように収入を得られない場合があることを認識しておいてください。 前出の「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によると、職種別の派遣社員の平均給与は、以下のとおりです。 ●研究者:1万6612円 ●製造技術者:1万6830円 ●建築・土木・測量技術者:2万332円 ●情報処理・通信技術者:1万9886円 ●一般事務従事者:1万1435円 ●会計事務従事者:1万2120円 ●商品販売従事者:1万714円 ●製品検査従事者:1万601円 ●機械組立従事者:1万1264円 ●介護サービス職業従事者:1万414円 ●清掃従事者:9622円 勤続年数に対する平均給与が低いからといって、派遣社員になったほうがよいという明確な答えはありません。派遣社員になったほうが自分のやりたい仕事ができるとか、転職に有利になる、スキルアップが可能など、給与の金額以外にメリットがあるならば、派遣社員になるのも方法の一つです。 関心のある業種があるならば、平均給与がどれくらいなのかを確認したうえで、派遣社員になることを検討してみてもよいでしょう。