三浦宏規×川平慈英 バレエが繋ぐ若者と老人の人間ドラマ、ミュージカル『ナビレラ』
韓国発のミュージカルがついに日本初演。若きバレエダンサーのイ・チェロクと、70歳にして初めてバレエに挑戦するシム・ドクチュルの交流を描いた感動作だ。チェロクを演じるのは、舞台『千と千尋の神隠し』や舞台『キングダム』、ミュージカル『のだめカンタービレ』と大作への出演が相次ぐ三浦宏規。5歳からクラシックバレエを始めた三浦にとっては、まさにハマり役と言える。さらにドクチュルを演じるのは、純然たる“老人”役は初となる川平慈英。すでに稽古も開始され、相性ぴったりなやり取りを見せるふたりに、作品に寄せる想いをたっぷり聞かせてもらった。 【全ての写真】三浦宏規、川平慈英の撮り下ろしカット
本読みから泣いてしまう「ドラマの根幹がズルい」
――脚本を読まれての感想、印象から教えてください。 川平 本読みであんなに涙が溢れてくるなんて、僕は初めての経験でしたね。 三浦 僕もです! 川平 自分でも「おい慈英、しっかりしろよ」って(笑)。 三浦 ラストシーンとか、もう僕は慈英さんの顔を見ただけで無理無理!って感じでした(笑)。 川平 で、その宏規くんを見て僕も無理無理!ってね(笑)。 ――それはひとりで読んでいる時から涙が? 三浦 僕は泣きました。これダメだって、一度脚本を閉じたくらいです(笑)。 川平 それほどドラマの根幹がズルいんだよね。 三浦 そうそう、ズルいんです! だから実際に人の声を通したらもう耐えられなくて。 川平 また宏規くんのエネルギーが圧倒的なんですよ。感受性がカラフルというか。僕はそれをいただいて、また返すっていうキャッチボールが出来るのが本当に楽しみで! それをそのままお客様も受け取って、生きるって素晴らしいとか、寛容さの大切さとかを思い出してもらえたら嬉しいですね。 三浦 僕こそ慈英さんからもらうものばかりで! ご一緒するのは初めてですが、昔から大好きな俳優である慈英さんと、バディものをやれるってことが心から嬉しいです。
「こんなに勇気をもらえる作品ってなかなかない」
――生き方も年齢もまったく異なるふたりを、バレエが繋ぐ物語です。チェロクとドクチュルそれぞれにとって、バレエとはどういった存在なのだと思いますか? 三浦 チェロクはやっぱり好きだったんですよね。ただ当然「男がバレエなんて」と周りから言われることもあったでしょうし、父親もそんなひとりで。しかもなかなか思うようにいかない、要はスランプに陥っている。そんな時、すごくやる気に満ち溢れたドクチュルが現れてこう言うわけです。「僕はバレエが好きなんだ。そして君のバレエが好きなんだ」って。真っすぐな目でそう伝えられたことでチェロクは浄化され、踊ることが好きなんだってことに改めて気づく。そういった意味でもドクチュルの存在はとても大きかったですし、彼にとってバレエというのは、すごく大切なものなんだと思います。 川平 なんかもう宏規くんそのままですよね! 三浦 僕も今、自分の話をしているのかなって思いました(笑)。 川平 ドクチュルにとってバレエは、もう生きる理由ですよね。ずっと郵便配達員として、自分のやりたいことをすべて置いて、子供たちのために身を削って生きてきた。でも小さい時に見たバレエ少女に心奪われ、それ以来ずっと、頭の片隅にはバレエってものがあって。で、人生の終焉を前に一念発起してバレエを始めるわけですが、そのきっかけになるのがチェロクなんですよね。初めて彼を見た時、まさにバレエの神様降臨!みたいな(笑)。それぐらいドクチュルにとってチェロクは、光り輝いて見えたんだと思います。 ――観劇に当たりハンカチは必須ですね! では最後に、楽しみにされている読者にメッセージをお願いします。 三浦 バレエ題材ということもあり、僕にとっては近いというか、非常に親近感のある作品です。ただどんな人でもきっと心揺さぶられる、本当に老若男女に楽しんでもらえる作品になるんじゃないかと思います。 川平 陳腐だと承知の上でストレートに言ってしまいますが、こんなに勇気をもらえる作品ってなかなかないと思います。これからみんなで丁寧に作っていけば、必ずや日本のミュージカル作品におけるエポックメイキングになるはず。そう強く思いますし、なって欲しいなと思います。 三浦 はい、本当にそう思います! 取材・文:野上瑠美子 撮影:石阪大輔 ヘアメイク:AKi(三浦宏規)・森川英展(NOV)(川平慈英) スタイリング:小田優士(三浦宏規・川平慈英) 衣装協力:KOH(03-6416-0897)(三浦宏規) <公演情報> ミュージカル『ナビレラ』 上演台本・演出:桑原裕子 原作:「ナビレラ」作:HUN、JIMMY オリジナル台本・作詞:パク・へリム 作曲:キム・ヒョウン オリジナルプロダクション:ソウル芸術団 出演 イ・チェロク:三浦宏規 シム・ドクチュル:川平慈英 ドクチュルの妻:岡まゆみ ドクチュルの次男、TVプロデューサー:狩野英孝 ドクチュルの長男、会社員:オレノグラフィティ チェロクの元サッカー仲間:瀧澤 翼 ドクチュルの孫娘:青山なぎさ/井上音生(Wキャスト) バレエ団長:舘形比呂一 久保貫太郎 市川絵美 岩﨑巧馬 岡山玲奈 河西茉祐 古賀雄大 政田洋平 舞夏 山田美貴 2024年5月18日(土)~6月8日(土) 会場:東京・シアタークリエ