受刑者の特性に応じ処遇 暴行問題受け、取り組みが効果 「拘禁刑」施行前に・名古屋刑務所
懲役刑と禁錮刑を「拘禁刑」に一本化する改正刑法が6月に施行される。 刑務作業が義務ではなくなり、受刑者の特性に応じた処遇が可能になる。2022年に受刑者への暴行問題が発覚した名古屋刑務所(愛知県みよし市)では、再発防止策として23年5月から全国に先駆けてこうした処遇を実施し、効果を上げているという。 同刑務所では昨年11月時点で受刑者703人のうち約25人が「ユニット処遇」を受けている。このうち「シニア・サポート・センターユニット」は主に高齢の受刑者が対象で、認知機能低下を防止するため、折り紙を使って手先を動かしたり、歌唱の指導を受けたりする。他にも発達障害などがある受刑者向けの「単独棟ユニット」や、薬物依存からの脱却を目指す「改善指導ユニット」がある。 同刑務所によると、以前はこうした特性のある受刑者も他の受刑者と同様、塗装や木工などの刑務作業を行っていた。しかし作業ペースについていけず、単独室に閉じこもってしまうようなケースもあったという。 ユニット処遇では受刑者の特性に合わせて作業内容を決める。少人数で、刑務官も加わることがあるため、以前に比べて会話の機会が増加。受刑者からは「出所に必要な手続きなどを普段から聞くことができ、出所後の生活のことを考えるようになった」などと肯定的な意見が多いという。 23年8月からは受刑者の呼称も原則「さん」「君」付けに変更。実施後のアンケートでは職員の6割超が「(業務に)支障はない」と回答した。現在は全国の刑務所が同様の対応を取っている。 吉弘基成所長は「受刑者に甘くしているわけではない」と強調する。「刑を執行しつつ、出所後に犯罪をしないよう必要な指導支援をしていくバランスが大事。課題があれば一つずつ正直に取り組んで解決したい」と語った。