【イベントレポート】「せかいのおきく」キネ旬ベスト・テンで2冠、塚本晋也は主演女優賞の趣里へ祝辞
2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テンの表彰式が、本日2月18日に東京・Bunkamura オーチャードホールで開催された。 【画像】第97回キネマ旬報ベスト・テンの表彰式の様子 「キネマ旬報ベスト・テン」は、1924年度に当時の編集同人の投票によってベストテンを選定したことを発端とする映画賞。今回は、阪本順治が監督と脚本を担当した「せかいのおきく」が日本映画1位に選出された。阪本は日本映画脚本賞にも輝き、同作は2冠を達成。企画・プロデューサーの原田満生は「この映画はヒットしないだろうけど、お客さんの記憶に残って評価されるような作品に育ったらなと思っていました。映画人が一生かけて目指すような一等賞をいただけてうれしいです」と感動を伝える。阪本は「最初はいきなり(原田から)SDGsの話をされまして。自分は普段そのような活動をしていなかったので、『自信を持って世に出せない。でもがんばるよ』と伝えました。今回のSDGsは、“阪本できるだけがんばるぞ”の略です」とジョークを交えてスピーチをした。 日本映画監督賞は「PERFECT DAYS」のヴィム・ヴェンダースに贈られた。彼はビデオメッセージで「(受賞の知らせを聞いて)言葉が出ませんでした。大好きな先人たちを通じて知っていた伝説的な映画賞です」「この歴史ある大きな栄誉に、ドイツ人である私を選んでいただき本当にありがとうございます。第二の故郷であり愛してやまない日本の友人たちに敬意を表します」と感謝を述べる。 主演女優賞は「ほかげ」での演技が評価された趣里へ。体調不良で登壇が叶わなかった彼女に代わって、監督の塚本晋也がステージに上がった。塚本は「趣里さんは体全体が非常に鋭敏なアンテナでできているような方。その場の空気を鋭敏に感じ取って自分でも出す、相手の俳優さんからも引き出すという、素晴らしい力を持っている俳優さんです」と称賛する。また彼は「本物の俳優さんとお仕事ができて非常に光栄に思っています。趣里さんおめでとうございます」と口にした。 外国映画ベスト・テン第1位は、ケイト・ブランシェットがドイツの有名オーケストラで女性初の首席指揮者に任命されたリディア・ター役で主演を務める「TAR/ター」に。監督のトッド・フィールドは外国映画監督賞も受賞した。なお文化映画ベスト・テン第1位はドキュメンタリー映画「キャメラを持った男たち─関東大震災を撮る─」が獲得。演出の井上実は「今は天上界にいる、震災の様子を撮影したキャメラマンたちと喜びをわかち合いたいと思います」と述べた。 読者選出日本映画監督賞の「Gメン」からは監督の瑠東東一郎が登壇。瑠東は「作品は僕らの手を離れ、お客さんに育てていただくものだと思う。『Gメン』を愛していただいた皆様に感謝しております」と口にする。また彼は主演の岸優太について「岸くんって天然なところがある。かわいらしいのですが、芝居で引き出すのは難しいので、(リハーサルと本番で)相手の俳優に芝居を変えてもらったり、ドキュメンタリーを生むような演出をしました」と振り返った。フォトセッションでは二階堂ふみ、磯村勇斗、アイナ・ジ・エンドら受賞者、受賞作品の代表者が一堂に会した。 「キネマ旬報ベスト・テン」全順位は「キネマ旬報2月増刊 2023年キネマ旬報ベスト・テン発表号」に掲載されている。 ■ 2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テン 受賞結果 □ 日本映画ベスト・テン 1位 「せかいのおきく」 □ 外国映画ベスト・テン 1位 「TAR/ター」 □ 文化映画ベスト・テン 1位 「キャメラを持った男たち─関東大震災を撮る─」 □ 個人賞 主演女優賞 趣里「ほかげ」により 主演男優賞 役所広司 「PERFECT DAYS」「ファミリア」「銀河鉄道の父」により 助演女優賞 二階堂ふみ「月」により 助演男優賞 磯村勇斗「月」「正欲」「渇水」「最後まで行く」「波紋」「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-」「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-」により 新人女優賞 アイナ・ジ・エンド「キリエのうた」により 新人男優賞 塚尾桜雅「ほかげ」により 日本映画監督賞 ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」により 外国映画監督賞 トッド・フィールド「TAR/ター」により 日本映画脚本賞 阪本順治「せかいのおきく」により 読者選出日本映画監督賞 瑠東東一郎「Gメン」により 読者選出外国映画監督賞 マーティン・スコセッシ「「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」により 読者賞 川本三郎 連載「映画を見ればわかること」により