自家焙煎のコーヒーにこだわる近田大輝店長＝小野市王寺町

　兵庫県小野市王子町、小野郵便局の隣に、よりすぐりのコーヒー豆や地元の旬の食材を料理に使う店「ＯＵＪＩ　ＣＡＦＥ（王子カフェ）」が開店した。「カフェで小野を元気に」を合言葉に８月から営業を始め、１０月１日に全面開店する。創業の経緯をたどると、地場産業である播州そろばんの製造販売から歩み始めた１００年の歴史に行き着いた。（坂本　勝） 【写真】コーヒー８種類の試飲コーナー ■特別ブレンドは「そろばん」イメージ 　カフェが１階に入るビルの名称は「プリンスガーデンビル」。所在地は小野市王寺町１３番地。１００年前の１９２４（大正１３）年、ここに近田算盤（そろばん）製作所が誕生した。創業者は近田市之助さん。播州そろばんの職人、商人であり、播州算盤事業協同組合の理事長や専務理事も務めた人物だ。 　戦後の経済発展期には、そろばんに加えて木珠工芸品や室内装飾寝具も製造販売した。社名を兵庫県算盤、兵庫特産（現ヒョウトク）と改め、事業や取扱商品を拡大した。 　一方、電卓の普及によるそろばん需要の低迷に伴い、ヒョウトクとは別の事業に転身した子孫もいた。その一人が店舗開発や独立開業支援などを手がける「メガフランチャイズシステム」の社長、近田勝也さん（６０）だ。市之助さんの創業地にできた王子カフェは同社の直営店。長男の大輝（たいき）さん（３１）が店長を務める。 　大輝さんは「そろばんで始まった家業を代々受け継ぐうち、父は『小野絶好調ラーメン』などラーメン店の開業支援、自分は大阪や京都でカフェなどの飲食業に関わった。古里に戻り、小野市の歴史や伝統を大切にしながら新たな挑戦をしたい」と意気込む。 　店内には色鮮やかなそろばんや、そろばんの玉を作るため専用工具で穴を抜き落とした木の板が陳列され、そろばん玉で時刻を示す時計も壁に掛かる。窓際には８種類のコーヒーを試飲できるコーナーもある。 　コーヒー通の要望に応じるバリスタの経験も積んだ大輝さんは「自家焙煎（ばいせん）のコーヒーには特にこだわった。地元の新鮮な食材を使うメニューで心を込めておもてなしを」と意気込む。 　カフェの特別ブレンド「そろばん」は「喫茶店と年季の入った木製そろばん」をイメージした。中深いりの「おうじ」は苦みと酸味のバランスを取った。 　食事は「季節野菜の合いがけカレー」「厚焼きだし巻きサンド」など。デザートは「レモンチーズタルト」「季節のミルフィーユ」などをそろえ、フィナンシェは５種類を用意する。今後は焼きたてパンやアフタヌーンティーセットも登場する予定だ。 【メモ】午前１１時～午後４時半（ラストオーダー）。火曜定休。９月は２５、３０日も休み。インスタグラム（ｏｕｊｉ＿ｃａｆｅ）に最新情報。王子カフェＴＥＬ０７９４・７０・８６０７