部下に「バカ」連発… パワハラ上司を訴えるも慰謝料が“5万円”だったワケとは
ジャッジ
裁判所 「会社は慰謝料5万円を払え」 順番に解説します。 ▼ 侮辱メッセージ 裁判所 「これセーフです(Xさんの社会的名誉、名誉感情を害するとはいえない)」 ーー なぜですか! 「バカ」を連発されてるんですが! 裁判所 「たしかにパワハラ上司が送信したメッセージは、表現方法として適切さに欠け、不穏当であり、Xさんが不快に感じるものであったことは否定できないが..」 ーーが!? 裁判所 「その頻度、経緯に照らしても直ちに業務の範囲を超えているとはいえず、Xさんの社会的名誉、名誉感情を害する程度・内容とはいえない」 マジですか・・・。バカを連発する必要ありますかね。バカと呼ばなくても指導できるやん。 ▼ 暴行 裁判所 「身体的暴行についてはアウトです。不法行為が成立します。慰謝料額は5万円とします」 パワハラ上司 「ちょっと待ってください! 小突いたことはあるんですが、それには理由があるんです」 裁判所 「どのような理由が?」 パワハラ上司 「Xさんが電話に対応しない、交通違反をした、給油時にガソリンを吹きこぼした、打ち合わせの時にメモをとらないなど、注意散漫なところがあったのです。だから小突いたのです」 裁判所 「小突かなくていいでしょ...(=これらの事情が有形力を用いて指導・注意するに足りる事情に該当するということはできない)。頭部・足部への有形力の行使については、本件全証拠を精査しても、業務における指導・注意の方法として是認しうるような具体的事情は認められない」 ■ 雑感 「バカ」を連発してるのに裁判所がセーフ認定したことは意外でしたね。身体的暴行はアウト認定してくれましたが、たったの5万円・・・低いですね。説教しながら蹴る必要あります? こんなに慰謝料が低いならパワハラ抑止につながらないですね。 その表現が指導として必要か? 相当性があるか? については裁判官の価値判断ひとつなので、裁判は運もあります。パワハラに厳しい裁判官にあたれば「バカなんてゼッタイ使っちゃダメだろ!」となりますが、今回の裁判官は「バカって言った回数も少ないしそんなことを荒立てるなよ」と思ったのかもしれません。
最後に
今回はパワハラメールが証拠として提出されていました。裁判では証拠が命です。証拠がなければパワハラ上司は「そんなこと言ってない」と平気でシラを切るので、ゼッタイに証拠を確保しましょう! ■ 相談するところ パワハラ上司や会社に損害賠償請求したい方がいれば、証拠を確保して労働局に申し入れてください(相談無料・解決依頼も無料)。 労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士へ相談を。 今回は以上です。これからも労働関係の知恵をお届けします。またお会いしましょう!
林 孝匡(弁護士)