【視点】今年も「内憂外患」の日本
明るい未来を想像することはできるが、そこに至る道のりは恐らく険しい。総じて多難な1年になるのではないか。順調に物事が進みそうな兆しが、なかなか見つからないからだ。 物価高騰が社会問題化している現実が示すように、庶民の生活は厳しさを増す一方だ。根本的な要因としては、日本経済そのものの弱体化が挙げられる。 世界との比較で見ると歴然だ。かつて世界2位だった日本のGDP(国内総生産)はドイツに抜かれて世界4位に後退したが、今年はさらにインドにも抜かれ、世界5位になると予想されている。 2023年の一人当たり名目GDPは経済協力開発機構(ОECD)加盟38カ国中22位に沈み、アジアでは韓国にも抜かれた。経済力が低迷すれば当然、国民の暮らしぶりも悪くなってしまう。 少数与党となった自公連立政権が国民民主党と今、国民の手取りをいかに上げるかを巡って激しい政策論議を交わしているのも「真面目に働けば収入が増え、豊かな暮らしができる」という、ごく当然のスキームが崩壊の危機に瀕しているからだ。 だが、日本人は高度成長を成し遂げた先人から膨大な資産を引き継いでおり、依然として世界では有数の豊かな国だ。 日本人も、全体としてはまだ豊かな暮らしを享受できている。その資産が健在のうちに負のスパイラルから脱却し、活力ある経済を取り戻さなくてはならない。 日本にはGDPでは測れない多種多様な価値も残っている。治安の良さ、和の精神、伝統文化、豊かな自然などだ。日本の良さを今後とも生かしながら、混沌とした世界でいかに存在感を発揮していくかが問われる。 内憂外患という言葉があるが、日本の国力が低下すると、途端に安全保障の環境も悪化した。実力行使で世界秩序を変えようとする中国やロシアの動きが、日本にもますます直接的な影響を与えるようになっている。その最前線にあるのが沖縄だ。 日米同盟を堅持しながら沖縄で自衛隊を質量ともに増強し、脅威に備える現在の路線は極めて現実的なものだ。 南西諸島の自衛隊強化や日米共同演習に反対するなど、絵空事のような政策を掲げる政党もあるが、この問題に関しては各党とも足並みをそろえてほしい。安全保障に関して政治が四分五裂では、国民の生命を守れないからだ。 防衛力の充実も強固な経済力が根本にあってこそ可能になる。経済の衰退と国防の衰退は軌を一にしている。日本人が危機感を持たなくてはならない理由もそこにある。 経済成長の大きな足かせが少子化による人口減少だ。内閣府の推計によると現在、1億2千万人台の人口は、2060年代には8千万人台に縮小すると予想される。これは戦後間もない昭和20年代の水準だ。 少子化は、なぜここまで進んだのか。「自分の世代だけ幸せであればいい」と刹那的な幸福を追求する傾向が強まり、私たちは次世代の育成や人材への投資を怠ってきたのではないか。 ここ数年で教育無償化が政治の大きなテーマになりつつあるが、そうした動きの背景にも、日本が少子化をここまで加速させたことへの深刻な反省がある。