「わたしの人生、なぜ弟に縛られなきゃいけないの?」障がい者の”きょうだい”に生まれて 弟を溺愛した母の遺品整理で気づいた「ああ、私は傷ついていたんだ」
■障がい者のきょうだい悩みは「結婚と親亡き後」 福岡県内に住む太田信介さん(48)は「福岡きょうだい会」を知人と共催。太田さんにも重い自閉症と知的障がいのある7歳年下の弟・宏介さん(41)がいる。きょうだいたちにとって最大の悩みは「自身の結婚」と親亡き後だ。そんな悩みを抱えるきょうだいたちを支えたいと、2018年に立ち上げた「福岡きょうだい会」には十人十色の悩みを持つきょうだいたちが集い、互いに思いを語る。 【写真で見る】小川洋子さんと弟・母 「色々あったけど仲良くしている」実は、そんな美談ばかりではない。 ■「弟のせいでいじめに でもそれが当たり前と思っていた」 福岡市に住む会社員の小川洋子さん(54)には軽度の知的障がいがある2歳違いの弟がいる。1980年代、特別支援学級を併設している公立学校は少なかったが、小川さんが育った神戸市の学校は当時制度が充実していて、弟と同じ学校に通わざるを得なかった。「通った」ではなく、洋子さんは「通わざるを得なかった」と話した。 弟には多動傾向があり、友達を叩き暴言を吐く。その仕返しは、全て姉の洋子さんに向かっていたという。 小川洋子さん(54)「社宅でいじめられてケガをしたこともあります。とにかく小学校の時の思い出っていい思い出がほとんどないんです」 いじめのことを母に告げたことは一度もない。 小川洋子さん(54)「自分の目の前にいる家族しか知らないので、これが当たり前なんですね。『周りのきょうだいと自分たちが違う』と初めて自覚したのは小学校の中学年と遅かったんですけど、当時から母は弟にかまいっ切り。私には二言目には『お姉ちゃんだからしっかりしなさい』『弟にやさしくしなさい』でした。でも、それが当たり前だと思って育ってきたから、自分でも何に困っているか分からない、それが小さい頃の私です。」 ■弟を溺愛する母私には無関心だった 弟は、母の献身的な愛情を受け天真爛漫に育った。一方、洋子さんは母からの愛情をあまり感じられなかったという。 小川洋子さん(54)「母からは『お姉ちゃんだからしっかりしなさい』とよく言われました。一方で『姉であるあなたには、弟の事で迷惑はかけない』とも繰り返し私に言いました。実際私は、高校・短期大学、就職後も青春を謳歌しました。ただ、母は私に無関心でした。趣味の社交ダンスの大会で良い成績を出しても、『あらそう』というような反応でした。でも、自分の目の前にいるこの家族しか知らないので、そういう状況が当たり前なんですね。それが自分にとって当たり前だったから、その当時はさびしいと思うこともなかったです」